2020年6月号掲載

世界96カ国をまわった元外交官が教える 外国人にささる日本史12のツボ

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著者紹介

概要

グローバルなビジネスの現場では、自国の歴史に関する知識が欠かせない。だが、戦国武将や幕末といった日本人が好むテーマは、意外にも外国人にはウケないという。では、彼らはどのような歴史・文化に関心を寄せるのか? 世界96カ国を訪れた元外交官が、外国人にささるテーマを厳選、興味深いエピソードを交え解説する。

要約

深く自然を崇拝する心

 海外の人々は、日本のどんなところに関心があるのか? これまで90カ国以上を訪問し、多くの有識者と議論した経験から言えるのは、海外の人たちに“ささる”テーマの1つは、日本ならではの歴史や文化だということだ。例えば ――

自然への崇拝と畏れ

 日本には古代から、自然崇拝、八百万の神の信仰、山岳信仰があった。山や森、木々にすら神が宿っていると考えるのが、日本人の宗教観である。このような自然崇拝は、各地の神社で祀られている神道という形をとって現在に繋がっている。

 日本に限らず、古代においては、人知を超えた神秘的なものへの信仰があった。しかし、森羅万象に神が宿るという考え方はユダヤ教、キリスト教などの一神教文化にはない。ユダヤ教以降の一神教においては、自然は人間によって支配されるものとされている。例えば、『旧約聖書』の「創世記」には、「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ」という記述がある。

 「支配せよ」という言葉からわかる通り、キリスト教でも、自然は人間によって支配されるものだった。だが、このような概念は、日本人の宗教観からは生まれてこない。

神道は宗教ではない!?

 先に述べたように、この八百万の神への信仰と大変近しい関係にあるのが神道である。

 日本思想が専門の伊藤聡氏は、神道のことを「『日本の民族宗教』の総称」としている。日本に古くから存在する、民族特有の自然崇拝をはじめとした宗教の総合体といった意味だろう。

 実際に、神道と自然崇拝は近しい関係にある。例えば、日本最古の神社の1つと言われる大神神社(奈良県桜井市)は、背後にある三輪山を神体としているため、神体を安置する本殿がない。三輪山自体が本殿という考え方なのだ。

 また、東アジアでは、儒教が広まるにつれ、祖先を崇拝する文化が根付いていった。この影響で、日本の神道は自然崇拝と祖先崇拝の両面から発展してきた。

 宗教では、開祖や聖典が存在する、死後について論じている、という2点は世界の常識だ。しかし、神道はその常識を満たしていない。死後について神道がどう捉えているのかは、明確ではない。そのため海外の人たちの中には、神道は宗教ではないという意見もある。

複数の宗教の併存

 神道は、仏教の伝来によって、徐々に仏教と習合(神仏習合)していく。そして、日本古来の八百万の神の信仰と外来の仏教が重なった形で、日本人の宗教観や宗教行為は形成された。

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