2020年11月号掲載

新装版 思考の技術 エコロジー的発想のすすめ

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著者紹介

概要

1971年刊『思考の技術――エコロジー的発想のすすめ』を改題・再編集したもの。立花隆氏の事実上の処女作で、エコロジー(生態学)の観点から、ものの見方・考え方を説く。生態学的に思考し、自然を畏怖せよという主張は、初版刊行から約50年を経た今も色褪せない。環境問題が深刻化する現代、一読の価値ある書といえよう。

要約

エコロジーとは?

 公害問題の深刻化とともに、にわかに生態学(エコロジー)が注目を浴び始めた。

 生態学は、生物学の一分野である。生物学者E・ヘッケルは、生態学をこう定義している。

 「生態学は、生物と環境および共に生活するものとの関係を論ずる科学である」

 そして、生態学が教えるものは、技術をいかに用いるべきか、いかなる技術を発展させるべきかというソフトウェアである。

 現代文明においては、善と悪の判断がつきにくいものが多い。例えば、モータリゼーションを進めることは、輸送力の増強、交通の便からいえば「善」、排気ガスによる公害、事故の激増という面からは「悪」となる。農薬の使用は、農産物の増産という面からは「善」、食物汚染、土壌汚染という面からは「悪」となる。

 こうした是非のつけにくい問題に正しい解答を与えてくれるものは、生態学的思考以外にない。

“いかに”を追求する

 生態学とは、生物の生活の容態を研究する学問である。この学問が、他の分野の科学と際立った特徴を持つのは、それが「いかに」(how)を一貫して追求してきたという点においてである。

 他の科学は、「いかに」から出発して、「なぜ」(why)を追求する。「なぜ」を追求することによって、現象の因果関係をたどり、そのもとにある原理に至ろうとする。

 物理学にしろ化学にしろ、あらゆる科学は現象を観察することから始まる。観察を深めていくと、現象と現象の間に相関関係を発見することができる。その相関関係を定式化したものが法則である。

 観察→相関関係の発見→定式化、このプロセスを帰納という。定式化された法則が集まり、1つの体系ができあがっていく。これが科学である。

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