2021年10月号掲載
経営者が知っておくべきジョブ型雇用のすべて
著者紹介
概要
コロナ禍で、“ジョブ型雇用”が注目を浴びている。リモートワークが増え、労働時間ではなく成果に応じた評価・報酬制度が必要 ―― そうした問題意識が発端だ。では、ジョブ型雇用とは具体的にどのような雇用システムなのか。その概要から導入する際のプロセスまで、ジョブ型雇用の全体像を解説する。
要約
メンバーシップ型雇用
この20年、世界的に企業の成長を支えてきた源泉。それは、グローバル化とデジタル化である。
しかし、日本企業は、いずれも海外企業に大きく後れを取っている。
メンバーシップ型雇用の特徴
日本企業のグローバル化やデジタル化が進まない理由の根底には、今のビジネストレンドとマッチしなくなった「メンバーシップ型雇用」がある。
メンバーシップ型雇用とは、「会社が雇用を保障する代わりに、社員は会社の業務指示に従って、原則、どのような業務にも従事する労働取引」だ。
メンバーシップ型雇用では、新卒で入社後、時には職種を超えて様々な業務に従事しながら定年まで勤め上げるのが標準的なスタイルである。
一方で、定年まで雇用が保障されることで、会社を辞めないことが普通になり、優秀な人材が組織外に流出することが少なくなった。それに付随して、中途採用の労働市場が活性化せず、新卒一括採用が主流になっていったのである。
メンバーシップ型雇用に生じた綻び
メンバーシップ型雇用が一種の社会保障の役割を担い、社会全体の安定に寄与していたことは間違いない。その一方で、産業の構造的変化に対して人材流動が起きにくくなっており、経済成長の勢いを取り戻せない一因になっている。
また、個別企業の雇用システムとしても、メンバーシップ型雇用には多くの綻びが出ている。例えば ――
・高度専門人材を確保・有効活用できない
多くの高度専門人材が、メンバーシップ型雇用を敬遠する。その1つの理由は、ジョブ型雇用 ―― 職務内容(ジョブ)に基づいて、適切な能力や知識を持った人材を雇用する制度 ―― と比較して、報酬水準が相対的に低いことだ。
人の出入りがあって、市場メカニズムが働く外資系企業(≒ジョブ型雇用)と、日本企業(≒メンバーシップ型雇用)の年収を比べると、報酬の違いは歴然としている。
・中高年のぶら下がり人材が恒常的に発生する
メンバーシップ型雇用では、あまりパフォーマンスに優れない個人を、45歳前後で非管理職の一番上まで昇格させることがよくある。これ以上、社内でキャリアアップは見込めないが、転職は難しく、残りのキャリアを会社にぶら下がって過ごすことになる。なぜ、こうしたことが起きるのか。