2021年10月号掲載

新訂 孫子

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概要

中国最古の兵法書『孫子』。戦争における戦略・戦術を論じたこの書は、約2500年もの間読み継がれてきた。それは、随所で示される深い洞察が人生の問題にも適用できるものだからだろう。「兵とは詭道なり」「彼れを知りて己れを知れば、百戦して殆うからず」…。現代にも通じる普遍的な戦略の数々を、平易な現代語訳で紹介。

要約

中国最古の優れた兵書『孫子』

 兵とは詭道なり。故に、能なるもこれに不能を示し、用なるもこれに不用を示し、近くともこれに遠きを示し、遠くともこれに近きを示し、利にしてこれを誘い、(中略)強にしてこれを避け、怒にしてこれを撓し、卑にしてこれを驕らせ、佚にしてこれを労し、親にしてこれを離す。

 其の無備を攻め、其の不意に出ず。此れ兵家の勢、先きには伝うべからざるなり。

 〈訳〉戦争とは、詭道(正常なやり方に反したしわざ)である。

 それゆえ、強くとも敵には弱く見せかけ、勇敢でも敵には臆病に見せかけ、近づいていても敵には遠く見せかけ、遠方にあっても敵には近く見せかける。敵が利を求めている時はそれを誘い出し、敵が強い時はそれを避け、敵が怒りたけっている時はそれをかき乱し、敵が謙虚な時はそれを驕りたかぶらせ、敵が安楽である時はそれを疲労させ、敵が親しみあっている時はそれを分裂させる。

 こうして敵の無備を攻め、敵の不意をつくのである。これが軍学者のいう勢であって、敵情に応じての処置であるから、出陣前にはあらかじめ伝えることのできないものである。

 

 孫子曰わく、凡そ用兵の法は、国を全うするを上と為し、国を破るはこれに次ぐ。軍を全うするを上と為し、軍を破るはこれに次ぐ。(中略)

 是の故に百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり。

 およそ戦争の原則としては、敵国を傷つけずにそのままで降服させるのが上策で、敵国を討ち破って屈服させるのはそれには劣る。軍団を無傷でそのまま降服させるのが上策で、軍団を討ち破って屈服させるのはそれには劣る。

 こういうわけだから、百たび戦闘して百たび勝利を得るというのは、最高に優れたものではない。戦闘しないで敵兵を屈服させるのが、最高に優れたことである。

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