2021年11月号掲載
SF思考 ビジネスと自分の未来を考えるスキル
概要
今、SFがビジネスで注目されている。読者の想像をはるかに超える未来社会や新技術、そこから生じる様々な課題とその解決策…。SFの世界は、「未来を生み出す」ヒントに満ちているのだ。そんなSF特有の思考法をいかにして身につけ、ビジネスに活用するか? その秘訣を、三菱総合研究所と筑波大学の共同研究者が語る。
要約
SFとビジネスの関係
「SF」は、もはや世界の一流のビジネスパーソンの常識である。
ジェフ・ベゾス、イーロン・マスク、ビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグ…。彼らは全員、「好きなSF作品がある」と公言している。
しかも、個人的にSF小説、SF映画を楽しんでいるだけではない。インタビューや著作において、自らのビジネスに関連づけて具体的な作品やガジェットに言及している人もいる。
BBCやハーバード・ビジネス・レビューなど、欧米のビジネスパーソン向けメディアがSF特集を組むことはもはや珍しくない。
SFが予想外の変化が起こる時代の未来を照らす
なぜ、SFが注目されるのか?
1つには「現代が非常に未来を予測しにくい時代である」ということが挙げられるだろう。
今日、あらゆる面でグローバル化が進んでいる。世界はすみずみまでつなぎ合わされ、どんな変化も瞬時に共有される。2020年に中国から世界に一気に広がったコロナ禍は、それを可視化した。
コロナ禍のように、世界でリスクを共有するタイプの社会変化は、これから増えるだろう。さらに、技術の発展にともなって、リスクが引き起こすトラブルのパターンも増える。AIをビジネスに導入すれば、新たなリスク対策も必要になる。
こうした状況に、既存の手法だけで対応するのは難しい。前例をどれだけ参照しても、未知の課題に対する解決策など見つからない。しかし、SFはそんなリスクについてずっと考え続けてきたジャンルだ。それが、SFが注目されるようになったポイントではないか。
SFが企業のパーパスをたぐりよせる
「ビジネスにおいて新たな価値創造が求められるようになった」ことも、SFが注目される理由の1つだ。
今、ビジネスの世界ではSDGsやESG経営というソーシャルなキーワードが注目されている。かつては機能や性能だけで商品やサービスが評価されたが、今は「それは社会の問題を解決できるのか?」という社会的な価値の重要性が増している。