2011年2月号掲載
顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説 アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか
Original Title :Delivering Happiness
著者紹介
概要
「ザッポス」は、靴や衣料などを販売するオンライン小売会社である。卓越した顧客サービスで知られ、2009年、アマゾンに12億ドルの評価額で買収された時は話題になった。そんな同社の経営に1999年から携わり、ほぼゼロから売上高10億ドル超の企業にまで育てたCEO、トニー・シェイが自らの生い立ち、ザッポスとの歩み、独自の経営哲学などについて語る。
要約
ザッポスとの出会い
私はハーバード大学卒業後、友人のサンジェイとともにソフトウエア会社のオラクルに入社した。
ほとんど何の努力もせずに高給をもらえたが、仕事は特にワクワクするものではなかった。
退屈しのぎに、企業のウェブサイトを作るサイド・ビジネスを2人で始めたところ、実際に顧客ができた。そこでオラクルを辞め、自分たちのビジネスに専念することにした。
私たちは、後に「リンクエクスチェンジ」と呼ばれるアイデアを考え出した。これは、広告費のないウェブサイトが無料でサイトの露出を増やせる仕組みで、大人気となった。
1998年、マイクロソフトがこれを買収したいと言ってきたので2億6500万ドルで売却した。
買収契約が成立した日から繰り返し自問したのは、「今からどうする?」「成功とは何だ? 幸せとは何だ?」ということだ。
お金も時間もあるが、何をすべきかわからない。そこで、これまでの人生で最高に幸せを感じた時のリストを作ってみた。
わかったのは、幸せを感じたどの時もお金を伴っていなかったということだ。クリエイティブで独創的でいると幸せだった。
私は金銭ではなく、情熱を追い求めることにした。そんなある日、ニック・スインマーンという人物からの留守電があった。それは、「アマゾンの靴バージョンを作り、世界最大のオンライン靴店にする」というアイデアを語ったものだった。
私にはひどいアイデアに思えた。履きもせず靴を買うなどあり得ない。だが、米国のフットウェア業界は400億ドル産業で、すでにその5%が紙媒体のカタログ通販ビジネスになっているという。
5%とは20億ドルだ。すでに消費者はそれだけの靴を通販で買っている。ネット通販が今後カタログ通販と同じ規模になると予測するのはもっともなことに思えた。