2022年4月号掲載
モダンエルダー(Modern Elder) 40代以上が「職場の賢者」を目指すこれからの働き方
Original Title :WISDOM@WORK
著者紹介
概要
テクノロジーが進歩する現代、デジタルスキルで代替できない「心の知能指数」や「知恵」の価値が高まっている。豊かな経験を重ねた賢い年長者 ―― 「モダンエルダー」の知恵が求められているのだ。寿命が延び、誰もが長く働かねばならない今日、年功者に期待される役割と、モダンエルダーに必要な能力を明らかにする。
要約
ビンテージの価値は上がり続ける
私は、50代でエアビーアンドビーの仕事に出会った。そこで、年齢は自分の半分で、自分より倍も賢い人たちに囲まれることになった。
最初はどうしていいかわからなかった。そんな時、思慮深い友人がこう言った。「世界は天才に満ちているが、知恵は足りない。だから、その希少な資源をちょっとばかりエアビーの若い人たちに分けてあげたら喜ばれると思うよ」。
私は20歳ほど年下の経営陣や同僚と協働し、心躍るような経験をした。そして学んだことがある。まず、年寄りがみんな賢いわけではないし、若者がみんな切れ者なわけでもない。だから、年齢でステレオタイプを決めつけるのはよくない。次に、知恵と天才が「対決」する必要はない。2つは両立できる。この2つは、仲の良い、いとこ同士のようなものだ。
多くの人は年を重ねることへの心の準備がなく、不安を抱いている。だが、年長者は多くのスキルを身につけている。知恵と無邪気さを上手く調合できれば、年を重ねながらも活力を漲らせることができる ―― 。
デジタルネイティブと年長者は共生し得る
「若き天才が、デジタル化された未来の楽園へと私たちを先導してくれる」。そんな神話をメディアは作り出してきた。では、若き天才たちが独力で進歩を成し遂げることは可能なのか?
ウーバー創業者のトラビス・カラニックは、経営者として未熟なミスを続けたために、取締役会から追放された。彼の物語から教訓が引き出されるとすればそれは、デジタルネイティブと年長者は共生し得るということかもしれない。
産業を破壊し、その技術的な優越と熱量と速さと体力によって大きな将来性を見せつける若いリーダーを、私たちはもてはやす。
だが、戦略的未来家のナンシー・ジョルダーノは、ユニコーン(企業価値が10億ドルを超える未公開企業)の多くがリーダーシップの面で困難に直面していると言う。そして、年長者が身につけた知恵の使い方を、若い起業家たちが少しの訓練で奇跡のように身につけることを期待している、と語る。
世の中で力を持つ人の層は若返っている
私たちは親より10年ほど長生きし、20年ほど長く働ける可能性がある。そして、世の中で力を持つ人の層は10歳ほど若返りつつある。
ハーバード・ビジネス・レビューによると、ユニコーンのCEOの平均年齢は41歳。一方、S&P500社のCEOの平均年齢は52歳だ。つまり、ビジネスにおける力が若い世代に移行しているということである。
「心の知能指数(EQ)」や知恵の価値
世の中は、私たちに否応なく年齢を意識させる。そのせいで、自分を賞味期限の迫った古い牛乳のように感じてしまう人もいる。