2022年10月号掲載
「プランB」の教科書
- 著者
- 出版社
- 発行日2022年8月10日
- 定価1,056円
- ページ数313ページ
※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。
※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。
著者紹介
概要
当初定めたプランに代わる“次の一手”、それが「プランB」だ。コロナ禍のような予想外の事態に備え、事前に策定すべきものだが、そもそも作っていない、あるいはプランBがあっても実行できないという組織が少なくない。なぜか? 本書は、その原因を示すとともに、プランBを発動させる方法を解説した「教科書」である。
要約
「完璧な」プランなど存在しない
組織を率いる際には、必ず「プラン」が作られる。そしてそれは、環境の変化とともに修正されなければならない。多少の修正で済み、目指すゴールが変わらないならよいが、そうとは限らない。「見通しの甘さ」「外部環境の変化」「能力不足」などがあれば、ゴールに到達できない。
そこで重要になるのが「プランB」(次の一手)だ。状況の変化に「こんなことがあっていいはずがない」と呆然として現実逃避をしたり、「プランA」(当初採択された実行プラン)の破棄をするのに逡巡したりしていたら、あっという間に経営も組織も破綻する。
だからこそ、プランBは「その時」になって慌てて探していては手遅れになる。プランBは、プランAを立てた時点で、予想外の状況をいくつも想定して策定されるべきものである。
「プランB」不在の国
残念ながら、日本ではプランB不在のケースが少なくない。その一例が、新型コロナウイルス(以下、コロナ)対策である。
2020年のダイヤモンド・プリンセス号の寄港以来、政府にとって、入国時の「水際対策」と飲食店などを閉める「行動制限」の徹底が、コロナ蔓延防止の至上命令だった。
だが、厳しい水際対策をして、行動制限を行ってもコロナを食い止めることはできず、市中感染が広がった。この結果、2022年半ば時点で940万人の感染者と3万人の死者を出した。
ということは、「何が失敗の原因か」はわからなくても、コロナ対策は根本的に「失敗した」ことは否定できない。ところが、ことここに至っても、水際対策と行動制限の大原則はいまだに揺るがない。これは一体どういうことか。
この状況を経営学的に言えば、「プランA」の失敗であり、「プランB」への切り替えの失敗と言える。
米国や欧州では、とっくに「コロナと共生」するプランBに変わっている。一方、国内では感染が終息しないのはプランAが不徹底とばかりに、さらなる規制強化を唱える政府関係者がいまだに少なくない。しかし、プランAの不徹底であるという科学的、客観的な検証は誰が、いつどこで行ったのか。筆者は寡聞にしてそれを知らない。
結局、この3年もの間、日本政府は感染拡大当初に定めたプランAをそのまま「堅持」している。そこにあるのは「プランAを改めるのは政府の失敗を認めることに等しい」という意識だけだ。
プランBの発動を阻むもの
もっとも、政府は確実にプランBを準備していた。なぜなら、霞が関の官僚組織は、優秀な戦略スタッフを大勢抱えているからだ。