2023年1月号掲載
パーセプション 市場をつくる新発想
著者紹介
概要
モノが溢れ、コモディティー化が進む今日、認知度が高いだけでは商品は売れない。重要なのは“みんなにどう思われているか”ということ。すなわち、商品やブランドに対する消費者の「パーセプション(認識)」が、次世代マーケティングのカギとなる。このパーセプションの要素、具体的な活用法についてPRのプロが指南する。
要約
パーセプションの正体
マーケティング業界で「パーセプション(認識)」という言葉が話題に上がることが増えた。
従来、マーケティングや広報活動で最も重視されていたのは「認知(アウェアネス)」だ。
しかし、モノが溢れ、コモディティー(汎用)化が進む昨今は、認知を獲得するだけでは消費者の心は動かせない。そこで、認知を上げる活動に加えて重要になっているのが、パーセプションの正しいコントロールスキルだ。
「パーセプション」の定義
パーセプションとは、平たく言えば、「モノゴトの見え方や捉え方」ということである。
物理的なモノや事象は、それ自体は存在するものだ。しかし、その見え方や捉え方は、人によって違うことが多く、時代によっても移り変わる。
トレンドの発生や移り変わり、そして衰退の裏には、常にパーセプションの変化が潜んでいる。
パーセプションを形成する要素
パーセプションは、次の5つの要素で形成されている。
①事象
すべてのパーセプションには、それに至る事象が介在する。例えば、かつてハイボールブームを巻き起こしたサントリーは、若者がハイボールで乾杯する酒場を都内に出現させた。この事象をメディアが取材することで、「衰退していたウイスキーが、ハイボールで若者に人気になっている」というパーセプションを世の中に広めるきっかけとなった。
②リテラシー
リテラシーは、現代では「与えられた材料から必要な情報を引き出し活用する能力」という意味で使われる。そして、物事を認識するリテラシーは、当事者が育った社会環境や文化的背景によって異なる。たとえ同じ事象でも、受け手のリテラシーによって期待値や納得感が変わるのだ。
例えばスウェーデンの生協は数年前、動画マーケティングに成功し、過去20年間で最高の売上を達成した。その動画は、オーガニック食品をある家族に2週間食べ続けてもらう実証ドキュメントで、子供たちの体から検出されていた化学物質がほぼゼロになるという、驚きの結果が示された。
他国ではオーガニック食品に対して「健康に良い」というパーセプションが形成されていたが、スウェーデンでは「環境に良い半面、価格が高い」というパーセプションが強かった。動画はその変化を狙ったものだ。