2023年2月号掲載

世界で最初に飢えるのは日本 食の安全保障をどう守るか

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著者紹介

概要

今、世界に“食料危機”が迫っている。ウクライナ戦争や異常気象など様々なリスクが顕在化する中、有事に備え、安定的に食料を確保することは喫緊の課題だ。にもかかわらず、日本の食料自給率は先進国で最低水準、“食料安全保障”への備えもない。そんな状況をもたらした政治の責任を問い、輸入頼りの食料政策に警鐘を鳴らす。

要約

「飢餓」が現実になる日

 いま世界中で、かつてない規模の食料危機が迫っている。WFP(国連世界食糧計画)とFAO(国連食糧農業機関)は、2022年6月に食料不安に関する報告書を発表している。新型コロナウイルスの拡大や、ウクライナ戦争の影響などにより、世界20カ国以上で深刻な飢餓が発生すると「警告」したのである。

 日本もまた深刻な脅威に直面している。筆者は2021年に「2035年頃には、日本人も飢餓に直面しかねない」と警告を発した。その根拠は、食料自給率が今後大幅に低下するという試算にある。

 日本のカロリーベースの食料自給率は、2020年の時点で約37%という低水準だ。しかもこれは、あくまで楽観的な数字に過ぎない。農産物の中には、種やヒナなど、ほぼ輸入に頼っているものもある。それらを計算に入れた「真の食料自給率」はもっと低くなる。筆者の試算では、2035年の日本の「実質的な食料自給率」はコメ11%、野菜4%など、壊滅的な状況が見込まれる。

コロナで止まった「種・エサ・ヒナ」

 2020年に発生したコロナショックは、世界中の物流に大きな影響を与えた。食料の輸出入自体への影響も大きかったが、食料生産のための生産資材(農機具、肥料、種、ヒナ等)が日本に入って来なくなったことの方がより重要な問題だ。

 例えば、日本では野菜の種の9割を輸入に頼っている。野菜自体の自給率は80%あるが、種を計算に入れると真の自給率は8%しかない。そしてコロナショックにより、その種の輸入がストップするというリスクに直面してしまった。

 他にも、日本の畜産はエサを海外に依存している。例えば、鶏の卵は97%を自給できているが、鶏のエサであるトウモロコシの自給率はほぼゼロだ。また、鶏のヒナはほぼ100%輸入に頼っている。エサやヒナの輸入が止まれば、鶏卵の生産量はおそらく1割程度まで落ち込むだろう。

「バイオ燃料」が引き起こした食料危機

 ウクライナ戦争を受けて発生した原油価格の上昇は、日本でも危機感を持って受け止められている。原油価格が上がると、バイオエタノールやバイオディーゼルといった代替燃料の需要が高まる。バイオエタノールはトウモロコシなど、バイオディーゼルは大豆などからつくられるため、トウモロコシや大豆の需要も高まる。

 すなわち、原油価格が上昇すると穀物価格も連鎖的に上昇する。そうなると、貧困国では穀物不足の危険性が高まってしまう。

 しかし、欧米諸国はこうした時にもしたたかさを発揮する。特にアメリカは、こうした穀物不足の状況でも、あえてバイオ燃料への転用を進め、穀物価格を吊り上げようとする。いわば、ビジネスのために、食料危機をあおっているのだ。

2008年の「世界食料危機」

 2008年に発生した「世界食料危機」は、まさにこうした動きによってもたらされた。

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