2023年2月号掲載

NUDGE 実践 行動経済学 完全版

Original Title :NUDGE:THE FINAL EDITION (2021年刊)

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著者紹介

概要

人の意思決定は、必ずしも合理的ではない。過去の経験、他の人の言動など様々な要素に影響され、非合理な選択をしてしまう。その原因となる人間の思考のクセやバイアスを、多数の例を挙げて解説。それらを踏まえた上で、より良い選択を後押しする「ナッジ」の手法を紹介する。2009年刊『実践 行動経済学』の「完全版」。

要約

バイアスと誤謬

 小さな要素が、人間の行動に大きな影響を与えることがある。例えば、男性用トイレの小便器にハエの絵が描かれていると、狙いが定めやすくなり、周囲を汚すことが減る。パンデミック時に、スーパーの客が並ぶ道に線を引いておくと、ソーシャルディスタンスを保つように促せる。

 このような注意喚起を「ナッジ」と呼ぶ。

経験則

 私たちは日々の問題に対処する時に、経験則を使う。経験則は役に立つが、結果としてバイアスが生じることもある。その1つが「アンカリングと調整」だ。これは、何らかのアンカー(錨。ここでは自分が知っている数字)を出発点として、自分が適切だと思う方向に調整していくものだ。

 アンカーはナッジの役割をする。タクシーでのチップの支払い行動がその一例だ。

 タクシー内でクレジットカードを使えるようになった時、ドライバーは嫌がった。カード会社に3%の手数料をとられるからだ。だが、実際に導入してみると、チップが増えたのだ!

 これにはあるアンカリングが関係していた。

 利用者がクレジットカードでの支払いを選択すると、次のようなチップの選択肢が表示される。

15%・20%・25%・希望の金額を入力する

 また、経験則には「利用可能性」というものもある。人は事例をどれだけ簡単に思いつくかどうかで、リスクが現実のものとなる可能性を評価する。例えば、殺人は自殺よりも報道されることが多いので、自殺よりも思い浮かべやすい。そのため銃で自殺した人より銃で殺された人の方が多いと思い込む傾向があるが、それは間違いだ。

 アクセシビリティ(入手のしやすさ)や顕著性(目立ちやすさ)は、この利用可能性と密接にかかわっている。

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「不確実性」超入門

田渕直也 日経BP・日本経済新聞出版本部(日経ビジネス人文庫)

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リチャード・セイラー 日経BP社

〔エッセンシャル版〕 行動経済学

ミシェル・バデリー 早川書房