2023年5月号掲載

人生後半の戦略書 ハーバード大教授が教える人生とキャリアを再構築する方法

Original Title :From Strength to Strength (2022年刊)

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著者紹介

概要

ハーバード大学で教鞭を執る著者は言う。医者や起業家など「高いスキルを要する職業であればほぼ例外なく、30代後半~50代前半にキャリアが落ち込み始める」と。その原因を明らかにするとともに、加齢により向上する知能やスキルを解説。これらの能力を活かし、キャリアを再設計するヒントを説いた、人生後半の指南書だ。

要約

ストライバーの呪い

 2012年、私は順調な人生を送っていた。一流シンクタンクの会長で、業績は上々。講演をすれば人が集まるし、数冊ある著書はベストセラー。

 にもかかわらず、私は特別満たされているわけでも、幸福なわけでもなかった。なぜか?

 私はその答えを求めて9年間模索した。社会科学から脳科学、哲学、歴史まで、多種多様な文献を調査した。不断の努力により一流の地位を築いた人々、つまり「ストライバー」の研究に没頭し、国家元首から金物店の店主まで、何百人ものトップを取材した。その結果見えてきたのは、仕事で成功した人が抱えている、密かな苦悩の種だ。

 私はそれを「ストライバーの呪い」と呼ぶ。実は、必死の働きによりある分野で卓越した人たちは最終的に不可避なキャリアの落ち込みに怯え、成功すればするほど満足できなくなっていき、人間関係の希薄さに悩むことになるのである。

ダーウィンの苦悩

 例えばチャールズ・ダーウィンは、生物学に対する私たちの理解を完全に変えた人物として、歴史に名を刻んでいる。それでも、ダーウィンは自分のキャリアに失望しながら死んでいった。

 彼は22歳の時、世界中を周航する測量船ビーグル号で5年に及ぶ航海の旅に出る。帰国後は、「自然淘汰説」の研究に没頭。そして50歳の時、『種の起源』を出版する。進化論を説いたこの本はベストセラーとなり、科学界を一変させた。

 しかしこの頃から、研究の創造性に陰りが見え始める。後年に膨大な著作を残してはいるが、『種の起源』以降、目新しい進展がなかった。彼は自分の研究成果を満足のいかないものと考え、歳を経るごとに気落ちしていった。

驚くほど早く訪れる落ち込み

 ダーウィンのようにがむしゃらに働くことで卓越した成果を上げてきた人は、ほぼ確実に、同じようなパターンの落ち込みと失望に直面する。しかも、その時は思っているより早く訪れる。

 ノースウェスタン大学のベンジャミン・ジョーンズ教授が発明家やノーベル賞受賞者の経歴を調べたところ、大発見をする時期は30代後半が最も一般的だと判明した。そして主要な発見をする可能性は、40~60代に急激に低下するという。

 他の知識分野の専門家も同じパターンをたどる。作家は40~55歳でパフォーマンスが落ち込み始める。医者は30代にピークに達し、その後は急激にスキルが衰える。また、テック企業の創業者は30歳までに創造力が衰えることが多い。

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