2023年6月号掲載
SECOND BRAIN(セカンド ブレイン) 時間に追われない「知的生産術」
Original Title :BUILDING A SECOND BRAIN (2022年刊)
著者紹介
概要
クリエイティブな仕事に集中するには何が必要か? 生産性のエキスパートである著者が提案するのは「セカンドブレイン」だ。ノートアプリなどで“備忘録”をデジタル化し、必要な情報や将来役立ちそうな知識を収集・整理する仕組みである。自分専用の“知の倉庫”を築くことで、思考が促され、創造性が発揮できるという。
要約
「セカンドブレイン」とは
「セカンドブレイン」とは何か?
それは、情報を整理し、いま必要なこととそうでないことを切り分け、将来役に立つかもしれない有益な情報を蓄積しておく仕組みのことだ。
私たちは毎日、新聞にすると174ページ分もの情報を消費しており、これは1986年の5倍に相当するという。現代人は情報が多すぎることに疲労困憊し、メンタルに負担がかかり、その結果、常に何かを忘れている気がするのである。
マイクロソフト社の研究では、アメリカの平均的な社員は、行方不明のメモやファイル探しに年間76時間を費やしているという。
これが、必要な情報をすべて頭に詰め込むことを諦め、記憶は機械に外注すべき理由である。
デジタル版「備忘録」
人ははるか昔から、自分の考えなどを書き留めて世の中を理解しようと努めてきた。レオナルド・ダ・ヴィンチやジョン・ロックなど、芸術家や知識人たちは何世紀にもわたって頭にひらめいたことをメモ帳、いわゆる“備忘録”に記録してきた。彼らは様々な情報源から知識を結びつけ、自分の考えを刺激した。現代社会でも、備忘録はあらゆる人の役に立つ。
メモや資料はいったんデジタル化すれば、検索・体系化が可能になり、すべてのデバイス間で同期でき、クラウドにバックアップを保存できる。このデジタル備忘録こそ「セカンドブレイン」だ。ノート、日記、アイデアを記したスケッチブックを1つにしたものと考えてほしい。
セカンドブレインとしておすすめのツールが、「ノートアプリ」だ。無料のアプリから、自分好みの機能つきのソフトウェアまで、幅広い選択肢がある。どれを使用してもOKである。
「記憶する」から「思考する」ヘ
セカンドブレインを取り入れると得られるメリットには、3つある。
1つ目は「記憶の補助」。デジタルノートに、会議のまとめ、インタビューからの引用など、忘れてしまいがちな事実やアイデアを保存する。
2番目は「アイデアを結びつける」こと。この段階で、セカンドブレインは「記憶する」ためのツールから「思考する」ためのツールへと進化する。例えば、本で出会った感動的なフレーズをプレゼンテーションに引用するのだ。集めたアイデア同士が引かれ合い、交わる。