2023年6月号掲載
残酷すぎる人間法則 9割まちがえる「対人関係のウソ」を科学する
Original Title :PLAYS WELL WITH OTHERS (2022年刊)
著者紹介
概要
著者いわく、「人生を築くのも、壊すのも、すべて人との関係」だ。調査・研究によれば、人々の幸福度は友人と過ごしている時が最も高い。また、不幸な結婚生活は健康を害し、離婚は刑務所に入るよりストレスが大きい。人間関係が人生に及ぼす、こうした影響の数々を紹介するとともに、より良く生きるためのヒントを示す。
要約
「頼れる友達」は実在するか
あなたにとって、最も幸せな瞬間を思い浮かべてほしい。それは、必ず人と関わっている。最も辛い瞬間も、やはり人に関わることだ。
人生を築くのも、壊すのも、すべて人との関係なのだ。
親しい友達の数は平均たった2人
例えば、友人関係。“友達”は人生でかけがえのないものの1つであることに、誰も異論はないだろう。しかし、友情の核心には謎の部分がある。
2009年の調査によると、米国人は平均4人と親しい間柄にあり、そのうち2人が友達だという。イエール大学のニコラス・クリスタキス教授によれば、こうした統計は過去数十年あまり変化せず、また、世界的にも同様の数字が見られるという。
ノーベル賞受賞者のダニエル・カーネマンは、人々の幸福度を調査すると、友達と過ごしている時が最も高いことを発見した。この結果は、年齢に関係なく、また世界中のどこでも見られた。
友人の存在が、幸せ、健康をもたらす
職場においても、友情がもたらす影響は大きい。上司を「親しい友人」と見なす人は20%に満たないが、その人々は、仕事を楽しめる確率が2.5倍高くなる。職場に親しい友人が3人いると、人生に幸せを感じる可能性が96%高くなる。
2006年のある研究では、親しい友人が10人いる乳がん患者群と、親しい友人がいない乳がん患者群を比較した。すると前者の生存率は、後者の4倍になった。これは男性についても同じで、友人の存在は、心臓発作の減少をもたらした。
「友達」の定義は誰も知らない
厄介なのは、友達が本当に意味するところが何か、はっきりわからないことである。
フェイスブックでの“友達”は、本当に友達だろうか? 多くの思い出はあるが、連絡を取って話そうとは思わない旧友は? 信頼できるが、健康診断で「悪性」という結果をもらった時に、癒しを求めようとは思わないあの人は?
彼らは友達だろうか? このありふれた言葉を真に定義することは、思っているより難しい。
友情に関する研究者で、アリゾナ州立大学教授のダニエル・フルシュカによると、「友達」という言葉は英語において、「父」や「母」を抜き、他のどの人間関係用語より多く話され、書かれているという。それなのに、この重要で強力で幸福をもたらしてくれる関係は、日常生活で不当な扱いを受けている。どういうことか?