2023年11月号掲載
東大教授が教える 知的に考える練習
- 著者
- 出版社
- 発行日2021年2月8日
- 定価770円
- ページ数194ページ
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著者紹介
概要
大量の情報が飛び交う現代において、必要な「頭の使い方」を紹介する。著者は、まず頭の中に「考えるための土台」をつくり、考える「クセ」をつけることが大事だと言う。そのためには情報の本質をつかみ、共通点、相違点を探す。こうしたクセさえつけば、情報に流されることなく、自分ならではの豊かな発想を生み出せる!
要約
情報洪水時代で変わる「頭の使い方」
現代は、ネットの爆発的な普及によって、情報が洪水のようにあふれている時代だ。今や誰もが大量の情報を簡単に手に入れられるようになった。
情報洪水時代、新しい頭の使い方が求められる
こうしたネットの爆発的な普及は、私たちの「頭の使い方」にも大きな変化をもたらした。
1つ目は、単純な知識はネットで調べればすぐにわかるので、覚えるために頭を使う必要がなくなったことである。これはプラスの側面といえる。
もう1つはマイナスの側面で、あまりにも情報が簡単に手に入るために、自分で考えたり、工夫したりするクセがつきにくくなったことである。自分の頭で考えることなく、ただ流れている情報を右から左に適当に組み合わせただけで、あたかも自分の意見のようになっている状況が多いのだ。そこには「考える」という工程が省かれている。
だが、人工知能(AI)の急速な進歩が叫ばれ、変化が激しい時代に、それで本当によいのか?
なぜ「考える」ことの価値が高まってきたのか
過去にも、明治維新や終戦直後のように、社会や価値観が大きく変化した時代があった。世の中がまるで変わってしまったので、過去の延長線上での発想がまったく通用しなくなったのだ。そうした時代に成功した人は、頭の使い方を切り替えることで、新しいチャンスを見いだした人だった。
今は、そんな時代とよく似ている。
そうなると、大切なことは、時代の変化にいかに対応していくか、そして変化に対応できる能力をいかに身につけていくかだろう。その際に重要なのが、「考える」という作業なのである。
変化の時代に必要とされる頭の使い方
変化の激しい時代に必要な頭の使い方というと、多くの情報を集めて、できるだけ正しく未来を予測するといったことをイメージする人は少なくないだろう。しかし、多くの情報を集めても世の中が予想もしない形で変わると、それらが役に立たなくなってしまう可能性がある。つまり、変化の時代とは、将来が見通しにくい時代でもあるのだ。
このような時代に必要なのは、ただ情報を集めることではなく、自分なりの発想や考え方を組み立て、情報を処理することである。これからの時代には、人と違うことが考えられて、人と違うことができることに、本質的な価値が生じる。
情報収集が劇的に楽になった分、「考える」ウエイトはますます重くなっている。みんなと同じ情報を材料にしながら、いかに新しく、人とは違う発想で、面白いことを考えつくか、そういう点での「考える」力がより求められているのだ。