2024年2月号掲載
なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか 〝ゆるい職場〟時代の人材育成の科学
- 著者
- 出版社
- 発行日2023年11月24日
- 定価1,760円
- ページ数286ページ
※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。
※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。
著者紹介
概要
今、多様な価値観をもつ若者、“Z世代”の育成に悩む企業は少なくない。残業しない、嫌になればすぐ辞める。そんな彼らを活躍させるための、新時代の若手育成論だ。独自調査を基に、Z世代の価値観や不安を明らかにし、職場に求められる要素を指摘。著者は言う。進行中の働き方改革に加えて、「『育て方改革』が必要だ」と。
要約
「Z世代」は存在しない
若者の育成が難問となっている。残業をしない、人付き合いをしない、会社が嫌なら辞めればいいと思っている…。なぜ企業は、若手の定着や育成でこれほど悩むようになってしまったのか。
その理由は2つに集約される。1つは「若手の仕事・キャリアに関する考え方の多極化」だ。
仕事に関する質問と、意外な結果
「Z世代はこれまでの世代にはない独自の価値観を持っている。まず、それを把握しなくては」。そう思い込んではいないだろうか。
だが、データは次のことを教えてくれる。
―― Z世代の価値観は「二極化」が著しい。「最近の若者はこうだから、こう育成しよう」というアプローチは、もはや効果が乏しい。
筆者が所属する研究所では、大手企業に在職する29歳以下の社会人に、仕事・キャリア観に関する5つの質問を行った。例えば ――
-
- 【A】現在の会社で長く勤めたい
- ⇔【B】魅力的な会社があれば転職したい
- 【A】忙しくても給料が良い仕事がしたい
- ⇔【B】給料は低くとも落ち着いて働きたい
これらの項目について、Aに近いかBに近いか、と聞いた結果、5項目のうち4項目でAとBの境界線がほぼ50%だった。例えば、最初の質問では「Aに近い」が52.4%、「Bに近い」が47.6%。ほぼ50:50で回答者が存在しているのだ。
「Z世代は○○」と一概に言えない
この調査結果からは、仕事やキャリアに関する様々な視点について、50:50で回答者がおり、その掛け合わせによってさらに細分化していく多様化の状況が浮かび上がってくる。
上記の質問の回答者には、「現在の会社で長く勤めたい」×「忙しくても給料が良い仕事がしたい」も、「現在の会社で長く勤めたい」×「給料は低くとも落ち着いて働きたい」もいる。
この関係は他の項目でも同様で、これが少なくとも4項目あり、それだけで若者の仕事・キャリア志向は16パターン(2の4乗)になる。「Z世代は〇〇だ」、と言える状況ではないのだ。