2024年5月号掲載
エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する「5つの原則」
著者紹介
概要
「エフェクチュエーション」とは、不確実性の高い状況における意思決定の理論のこと。従来の経営学が重視する「予測」ではなく、「コントロール」で不確実性に対処する。世界的経営学者が提唱したこの理論のエッセンスを、わかりやすく紹介する。先行き不透明な今日、生き延びる知恵を与えてくれる書だ。
要約
エフェクチュエーションとは何か
「エフェクチュエーション」
これは、不確実性の高い状況における意思決定の一般理論で、サラス・サラスバシー教授(ヴァージニア大学)の研究から発見された。
彼女は、新しい市場や産業の創造という、極めて不確実性の高い問題に繰り返し対処してきた熟達した起業家を対象に意思決定実験を行い、彼らが共通して活用する思考様式を見いだした。
「予測」ではなく「コントロール」で対処
エフェクチュエーションの特徴は、従来の経営学が重視する「予測」ではなく、「コントロール」によって不確実性に対処する思考様式であること。
そのため、既存の顧客ニーズを前提にできない製品・サービスの事業化、最適なアプローチを定義することが困難な課題解決など、高い不確実性を伴い、予測に基づく意思決定では合理的と見なされないような取り組みの推進にも、適用できる。
起業家的方法の発見
これまでの経営学では、不確実性に対しては、「追加的な情報を収集・分析することによって、不確実性を削減させる」ことが目指されてきた。
それゆえ私たちは一般に、不確実な取り組みに際しては、行動を起こす前にできる限り詳しく環境を分析し、最適な計画を立てることを重視する。
目的(例えば、新事業の成功)に対する正しい要因(成功するための最適な計画)を追求しようとする、こうした思考様式を、サラスバシーは「コーゼーション(因果論)」と呼ぶ。
しかし、意思決定実験の結果、高い不確実性への対処において熟達した起業家が、必ずしも予測可能性を重視するコーゼーションを用いておらず、対照的に、コントロール可能性を重視する意思決定のパターンがみられた。
この意思決定の論理は、一組の手段を活用して生み出せる効果(effect)を重視することから、「エフェクチュエーション(実効理論)」と名付けられた。具体的には、次の5つの思考様式で構成されている。