2024年8月号掲載
ダークパターン 人を欺くデザインの手口と対策
Original Title :Deceptive Patterns:Exposing the Tricks Tech Companies Use to Control You (2023年刊)
著者紹介
概要
「ダークパターン」は、著者が命名した言葉。「ユーザーを騙して、特定の行動に誘導するために設計されたユーザーインターフェース(UI)」のことである。例えば、解約手続きがしにくいサイトや、購入するようプレッシャーをかける押し売りサイト等々。世に蔓延る、こうした巧妙な手口の数々を、様々な事例とともに詳説する。
要約
人を欺くデザインとは
2010年、私は「ダークパターン」をこう定義した。「ユーザーを騙して、例えば、品物の購入時に保険に入らせたり、定期購入を契約させたりなど、特定の行動に誘導するため慎重に設計されたユーザーインターフェース(UI)」と。
この定義は今や少し古いため、最近は「ディセプティブ(人を欺く)パターン」と言っている。
当時、人を欺いたり操ったりするUIデザインについて詳しく調べていたのは私くらいだったろう。それが今、多くの人の注目を集めている。
空港内のショッピングエリア
それでは、どのようにして企業はデザインを利用し、ユーザーを操って利益を得るのか。
まずは物理的な例として空港がある。ロンドン・ガトウィック空港から飛行機に乗る時は、「遅くとも出発の2時間前には空港に到着し、チェックインと保安検査のために十分な時間を確保する」ように推奨されている。
しかし、この空港では、保安検査を通過した後、直接出発ラウンジに向かうことはできない。そこに向かう途中、旅行客は強制的にショッピングエリアの入り口から出口まで歩かされる。曲がりくねった通路によって商品ディスプレイが必ず客の視界に入るため、そのエリアを通り抜ける際、どうしても売り物を見てしまうようになっている。
デザインを利用して客を操り、強制する
さて、航空券と規約に目を向けよう。これらの文書には、出発ラウンジへ入るのに店で香水や美容品を見て時間を使わなければならないとは、一言も書かれていない。少なくとも出発の2時間前には到着しているよう案内されているだけだ。
これがまさに、ビジネスにおいてデザインを利用して客を操り、何かを強制するいい例だ。企業側は利益のために意図的に通り道を強制したレイアウトを採用しているにもかかわらず、それを客に伝えずにただ2時間前に来るようにとだけ案内し、しかもその工程を飛ばす選択肢を与えない。
この例では旅行客が受ける影響は小さい。しかし毎年4000万人以上がガトウィック空港を利用することを考えれば、このように設計された訳にも納得がいく。人の心理を操作するような設計によって、たった数%でも買い物客が増えるだけで、空港は店に巨額のテナント料を要求できるのだ。
これがオンラインなら尚更、客を操り騙すのが容易になる。設計者がもっと多くのことをコントロールできるからだ。バーチャルだと、利益率を上げるためにあらゆる工作が可能だ。