2024年9月号掲載

経営理念が現場の心に火をつける

経営理念が現場の心に火をつける ネット書店で購入
閉じる

ネット書店へのリンクにはアフィリエイトプログラムを利用しています。

※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。

※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。

著者紹介

概要

「いい経営」を「すばらしい経営」に進化させるカギは“経営理念”にある ―― 。一橋大学名誉教授の伊丹敬之氏が、経営理念を育み、社内に浸透させることの大切さを、グーグル等の事例を挙げて明快に解説。氏は言う。経営理念を組織内で共有し、人心が統一されると、現場は驚くような行動を自発的に取るようになる、と。

要約

すばらしい経営への進化のカギ

 世の中の経営には、そこそこの経営もあれば、いい経営もある。さらに、いい経営の先に、すばらしい経営がある。そして、いい経営をすばらしい経営に進化させるカギが「経営理念」である。

 経営理念において大切なのは、それが深く信じられていることと、組織内で共有されていることだ。そうした理念で人心が統一されると、現場が驚くような行動を自発的にとってくれる。

グーグル ―― 基本ソフトを現場が勝手につくる

 1つ実例を紹介しよう。ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンが設立したグーグルでの出来事だ。

 創業から4年が経ったある金曜日の午後、ペイジが本社にあるカフェテリアの掲示板に張り紙をした。それはグーグルの検索結果画面を印刷したもので、当時の広告エンジンが表示した広告がいくつか出ていた。その広告がいずれも検索語と関連がないと感じたペイジは、「この広告表示はムカつく」となぐり書きをして張り出したのだ。そして何か指示を出すわけでもなく、家に帰った。

 この掲示板を、たまたま広告エンジンチームとは無関係のエンジニアが見た。彼は、「世界の情報を瞬時に誰にでも提供する」という使命を掲げる会社として、この広告表示はよくないと感じた。そこで他の4人のエンジニアに声をかけて、新しいエンジン候補のソフトの骨格をつくり始めた。

 そして週末の短い時間に、5人の間で情報交換と議論という「仲間の間の相互刺激プロセス」が行われた結果、新しいソフトの原型ができあがった。それが、グーグルの収入の大きな部分をあげる「アドワーズ」の基本型の誕生の瞬間だった。

 この5人は広告エンジンへの責任を持つ立場にあったわけではなく、指示を受けたのでもない。ただ、「ムカつく」という創業者の言葉に刺激されて、勝手に動き始めたのである。そうした現場の自由な行動を奨励する雰囲気が、グーグルにはあった。現場の自律性を強調する、というのがペイジの経営哲学だったのである。

 事の本質は、みんなが「勝手に」動き出す、ということである。それでいて、彼らの行動は会社が目指す方向性と見事に合っている。そうなった要因の1つは、会社の理念が明確に現場に伝わっていたことにある。

経営理念=企業理念+組織理念

 経営理念の元祖・松下幸之助は、その主著『実践経営哲学』で、企業という存在の使命・目的と、経営のやり方の基本的考え方、その2つが経営理念の内容だ、と述べている。

 以下では、企業という存在の使命・目的を「企業理念」、経営のやり方の基本的考え方、つまり組織運営の基本方針を「組織理念」と呼ぶ。

この本の要約を読んだ方は、
他にこんな本にも興味を持たれています。

よきリーダーは哲学に学ぶ

アリソン・レイノルズ CCCメディアハウス

ザ・マネジャー 人の力を最大化する組織をつくる

ジム・クリフトン 日経BP・日本経済新聞出版

経営12カ条 経営者として貫くべきこと

稲盛和夫 日経BP・日本経済新聞出版

NINE LIES ABOUT WORK 仕事に関する9つの嘘

マーカス・バッキンガム サンマーク出版