2022年11月号掲載
経営12カ条 経営者として貫くべきこと
- 著者
- 出版社
- 発行日2022年9月6日
- 定価1,870円
- ページ数243ページ
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著者紹介
概要
京セラ、KDDI、そしてJALと、経営の第一線を歩き続けた稲盛和夫氏。その氏が、経営者は何を思い、何を行うべきか、貫くべき経営の要諦を説いた。事業の目的・意義を明確にする、具体的な目標を立てる、強烈な願望を心に抱く…。2022年8月に逝去した氏の経営の集大成ともいうべき12の原理原則が、力強く明快に語られる。
要約
経営の原理原則
「経営12カ条」 ―― 。
これは、「どうすれば会社経営がうまくいくのか」という経営の原理原則を、私自身の経験をもとに、わかりやすくまとめたものである。
経営というと、複雑な要素が絡み合う難しいものと考えがちだが、物事の本質に目を向けるなら、むしろ経営はシンプルなものであり、原理原則さえ会得できれば、誰もが舵取りできるものである。
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事業の目的、意義を明確にする
まずは、事業の「目的」「意義」を明確にすることが必要である。そして、目的や意義は、なるべく次元の高いものであるべきだ。言葉を換えると、公明正大な目的でなければならない。
また、従業員に懸命に働いてもらおうと思うなら、そこには「大義名分」がなければならない。「この崇高な目的のために働くのだ」という大義名分がなければ、人は一生懸命にはなれない。
私は京セラの創業3年目に、従業員の反乱に遭遇した。会社設立2年目に、10名ほどの新入社員を採用したのだが、その彼らが昇給などの待遇保証を求めてきたのである。私は採用面接の時に「一生懸命頑張って立派な企業にしたいと強く思っている。そういう企業に賭けて一緒に働いてみる気はないか」と話し、彼らはそれを承知の上で入社した。にもかかわらず、入社1年で「将来を保証してもらわなければ…」と言ってきたのだ。
「私は、入社した皆さんが心からよかったと思う企業にしたい。それが嘘か真か、騙されたつもりでついてきてみたらどうだ。もし私が私利私欲のために働くようなことがあったならば、私を殺してもいい」。3日3晩かけて、とことん話した。ようやく私の言葉を信じてくれた彼らは、要求を撤回し、会社に残ってくれることになった。
この事件は、まさに私に経営の根幹を気づかせてくれる契機となった。それまでの私は、「自分の技術を世に問いたい」ということを会社設立の目的としていた。また、「夢中で働けば何とか食べていけるだろう」と安易に考えていた。そんな私が、従業員は将来にわたる保証を求めているということを心底から知らされた。
同時に、「経営とは、経営者が持てる全能力を傾け、従業員が物心両面で幸福になれるよう最善を尽くすことであり、企業は経営者の私心を離れた大義名分を持たなくてはならない」という教訓を得た。公明正大な事業の目的や意義があってこそ、従業員の心からの共感を勝ち取り、全面的な協力を得ることができる。
この事件によって気づきと教訓を得た私は、京セラの経営理念を次のように定めた。