2024年9月号掲載

数字まみれ 「なんでも数値化」がもたらす残念な人生

Original Title :MORE. NUMBERS. EVERY. DAY. (2023年刊)

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著者紹介

概要

今日、歩数や睡眠時間などを記録するアプリは無数にある。それらは様々な活動の実績を数値化し、明確に示してくれる。だが一方で、楽しい活動をつまらなくし、不幸な人間を生み出してしまう恐れも。本書は、そんな過剰な数値化が人々にもたらす影響を明らかにするとともに、数字に支配され、騙されないための心構えを説く。

要約

数字とセルフイメージ

 私たちの毎日は、どこもかしこも数字だらけだ。運動した日数、何日働いたか、何時間眠ったか…。あらゆることをスマートフォンやアプリが数えてくれる。毎日増え続ける数字。それは実際、人々にどんな影響を与えているのか?

「いいね」の数が招いた自殺

 驚くべきことに、アメリカでは、ティーンエイジャーの死者数全体の13%を自殺が占める。そしてその多くで、「いいね」の数やフォロワー数といったものが死の一因となっている。

 「いいね」の数が少ないというだけで、人は死ぬ。個人の人気や価値をそうして過度に数値化すれば、既存の心理的メカニズムを強化してしまう可能性がある。「いいね」の数は、傷つきやすさと思い上がりの両面のセルフイメージを増幅し、短時間で自我を破壊することも高揚させることもできる。弱い者はもっと弱いと感じ、強い者はもっと強いと感じるのだ。

数字が形づくるアイデンティティ

 身の回りを飛び交う数字によって私たちの自信や感情が影響を受けることに、疑いの余地はない。

 民間企業で働く人なら、自分に関連する数字が重要なことを誰でも知っている。顧客満足度も、採算性も、売上高も、その数字は頭に入り込んできて意欲、選択、優先順位決定に影響を及ぼす。

 数字が関わってくるのは仕事だけではない。自分のスマホにあるアプリを見渡してほしい。おそらく生活の多くの側面に関する数字が目に入ってくるはずだ。まず、経済状態に関する情報(ローン残高や信用度)、健康に関する情報(歩数、脈拍数)。そしてソーシャルメディアからも、閲覧数、「いいね」の数、フォロワー数などが届く。

 これらの数字とそれが表す内容は、人のアイデンティティに影響を及ぼしている。自分がエクササイズをしている写真に大量の「いいね」がつけば、もっと投稿するようになる。そうするとエクササイズが自分にとってさらに重要になっていく。大量の「いいね」が大量のドーパミンを分泌させ、セルフイメージを強化し、その活動が自分にとってより重要な意味をもつようになるからだ。

 ならば、私たちは日常生活で接する数字に、もう少し用心するべきだろう。

数字のリスク

 今の世の中では、自分自身に関するデータを記録することが日常的になった。そのためのアプリも無数にある。私たちはより健康に、より幸せになるために、自分の記録をとって監視する。

 しかし、実際に効果はあるのか?

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