2024年11月号掲載
M(マグニチュード)9地震に備えよ 南海トラフ・九州・北海道
- 著者
- 出版社
- 発行日2024年8月22日
- 定価1,320円
- ページ数290ページ
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著者紹介
概要
地球科学者の著者は言う。「今後、東日本大震災と同じマグニチュード9の巨大地震が、3つ起こる可能性がある」。試算では、南海トラフ巨大地震の被災者は何と6800万人。本書では、巨大地震が発生するメカニズムや各地の被害規模、備えなどを、最新の研究をもとに説く。地震国に生きる上で、知っておきたいことが詰まった1冊。
要約
東日本大震災は終わっていない
近年、日本では地震が頻発している。これは、2つの大きな歴史的サイクルから生じている。
1つは、1000年ぶりに日本列島が経験しつつある「大地変動の時代」で、もう1つはほぼ規則正しく太平洋で起きる巨大地震の再来である。具体的には、2011年の東日本大震災により地殻変動が活動期に入ったことと、約100年おきに襲ってくる南海トラフ巨大地震による地盤の変動である。
1000年に1回の超弩級地震
2011年3月11日、東北沖を震源とする地震が立て続けに発生した。この東日本大震災は日本の観測史上最大規模であるだけでなく、世界的に見ても1900年以降歴代4位の超弩級の地震だった。すなわち、日本では1000年に1回起きるかどうかという非常にまれな巨大地震だったのである。
地震の規模を示すマグニチュード(M)は9.0に達した。放出エネルギーで見ると、1995年の阪神・淡路大震災の1500倍である。
4つのプレートがひしめき合う日本列島
巨大地震の発生は、プレート・テクトニクス理論という地球科学の基本理論で説明される。
東日本大震災は「プレート」と呼ばれる厚い岩板が日本列島の下へもぐり込むことによって発生した。太平洋を広く覆う「太平洋プレート」が、東北地方を乗せた「北米プレート」の下へもぐり込んでいる。海底が凹んだ海溝の下で時々反発が起き、この時に巨大地震が起こるのである。
日本列島の地下構造は世界でも特異で、4枚の動くプレートに囲まれている。太平洋側では「海のプレート」である太平洋プレートとフィリピン海プレートが、日本海側には「陸のプレート」である北米プレートとユーラシアプレートがある。
海のプレートは陸のプレートの下へ数百kmも沈み込んでおり、その境界には深い溝状の地形があり「海溝」または「トラフ」と呼ばれている。具体的には日本海溝と南海トラフがそれに当たる。
日本各地で頻発する「内陸地震」
日本列島で起きる地震は、大きく「海溝型地震」と「内陸地震」(直下型地震)に分けられる。近年、日本各地で頻発しているのは内陸地震である。
その原因の1つは東日本大震災だ。それまでは太平洋プレートが北米プレートの下に沈み込んで地下の岩盤を押していたストレスが、M9.0の巨大地震でプレート間の固着域が破壊され急変した。
大陸プレートが海側に引き伸ばされ、日本列島は最大5.3mも太平洋側に移動した。また海岸沿いの地盤は最大1.14m沈降し、ここで生じたひずみを解消しようとして岩盤の弱い部分が割れて内陸地震が起きはじめたのである。