2025年4月号掲載
人生の経営戦略 ――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20
著者紹介
概要
コンサルティングの世界で活躍した著者は言う。経営学のコンセプトは人生に活用できる、と。例えば、企業の「パーパス」。正しい目標が大前提なのは、人生もまた同じ。「バランス・スコア・カード」というフレームワークは、仕事と私生活の両立に役立つ等々。様々な悩みを解決し、より良く生きるためのヒントが詰まった1冊だ。
要約
パーパス
私はコンサルティングの業界で、様々な経営戦略論のコンセプトや人材育成論のフレームワークなどを学び、現場でそれらを使い倒してきた。
そして、ある日、実践を通じて身につけたこれらの知見が、個々人の「人生の経営戦略=ライフ・マネジメント・ストラテジー」を策定し、実行する上でも有用であることに気づいた。
パーパスの重要性
人生に活用できる戦略コンセプトの1つが、「パーパス」である。
現在、世界的に企業のパーパスを設定する動きがある。その理由は明白だ。企業の多くが「自分たちは何のために働いているのか?」「自分たちは何のために存在しているのか?」という実存的な問いに答えられない状態になっていたからだ。
こうした状態は人から「生きる意味」を失わせ、企業経営の立場からも大きな問題となる。従業員が「何のために?」と悶々と悩むような組織であれば生産性もへったくれもない。「意味の喪失」はまた「利益の喪失」も意味するのである。
「正しい戦略」は「正しい目標」が大前提
私たちは、正しい目標を欠いてしまうと、偽りの目標を設定してしまう。そして、偽りの目標を設定すれば、論理的に正しい戦略を設計してもプロジェクトは必ず破綻する。ここに、個別戦略論の是非を云々する前段階として「プロジェクトの目的=パーパス」について思考する理由がある。
ということで、本書では「人生というプロジェクトの長期目標」を次のように設定する。
「時間資本を適切に配分することで持続的なウェルビーイングの状態を築き上げ、いつ余命宣告をされても『自分らしい、いい人生だった』と思えるような人生を送る」
この定義のポイントの1つは、人生の経営戦略の検討において、私たちがコントロールできる戦略変数は「時間資本しかない」ということである。
私たちはしばしば、人生を計画する際、他者や組織など、自分ではコントロールできないものを動かそうとして、無用な努力を重ねてしまう。これを避けるため、自分でコントロールできる戦略変数 ―― 「時間資本」にフォーカスを当てる。
また、「持続的なウェルビーイングの状態を築くこと」を目指す。これも重要なポイントだ。