2025年5月号掲載
森の生活 ―ウォールデン―
Original Title :WALDEN, OR LIFE IN THE WOODS (1854年刊)
- 著者
- 出版社
- 発行日1991年3月10日
- 定価1,595円
- ページ数507ページ
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著者紹介
概要
米国の思想家ヘンリー・ソロー。産業革命の影響を受けつつあった時代、彼はボストン郊外・ウォールデン池畔に自ら小屋を建て、独り思索と労働の日々を過ごした。本書は2年余にわたるその生活記録と、人間のあるべき姿を明快に綴ったものだ。浪費と自然破壊が進む今日、ソローの知恵と人生哲学に学ぶ意味は大きいだろう。
要約
“1つの実験”という名の人生
私が本書の大部分のページを書いたのは、マサチューセッツ州コンコードにあるウォールデン池畔に建てた家においてである。この家は近隣から1マイル離れた森の中にあった。私は自分の手仕事だけで生計を立て、そこに2年2カ月、1人で暮らしていた。
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私はずいぶんコンコードの町を歩き回ったが、店でも、事務所でも、畑の中でも、至る所で住民たちは苦い目にあっているように見えた。
町の若者たちは、不幸なことに、畠、家屋、家畜、農具の一切を相続しなければならない。不幸というのは、これらのものを入手するのは容易だが捨てることが難しいからだ。
彼らにしてみれば、牧場に生まれて狼として育てられた方がよかったのだ。そうすれば、自分がどのような田畑で働けばよいかという炯眼でものを見ることができたはずだ。
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人間は思い違いして苦労している。
人間はやがて土になる。にもかかわらず、世間の人は、一般に不可避とされる見せかけの運命によって、錆で腐蝕するか、そのうち盗人が奪ってしまうような財産をせっせと貯えている。それは愚者の生涯というものだ。早く気づかないと、臨終を迎える時になって気づくのだ。
比較的自由なこの国においてさえ、たいていの人間は単なる無知と誤解のために、しなくてもよい苦労や、取るに足りない仕事に追われて、その素晴らしい人生の果実を手にすることができない。実際のところ、仕事に追われる人は自己本来の姿を取り戻す暇がなく、他者と人間らしい関係を維持する余裕もない。そうした人間は単なる機械になってしまうだけで、時間的余裕など持たない。
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人間の主要な目的は何か、生活の真の必需品と財産とは何かを考えてみる時、人々がありきたりの生活を選んだのは、他の生活よりも良いと思ったからである。彼らは、それ以外に選択の余地はないと考えている。しかし、健全な心を持った人たちは晴れやかに太陽(「真理」の象徴)が昇ったことに気づいている。