1999年11月号掲載
断絶の時代 [新版] いま起こっていることの本質
Original Title :THE AGE OF DISCONTINUITY
著者紹介
概要
1969年刊の同名書の新版。かつてドラッカー教授が指摘した、社会の根源的な変化、すなわち「断絶」の進行は、今日、現実のものとなった。情報化の進展しかり、グローバル経済の出現しかり、知識社会の興隆しかり。その慧眼には、ただ驚くばかりだ。ちなみに英国のサッチャー元首相は、民営化の考えを本書に学び、国営事業の数々を民営化していったという。
要約
「継続の時代」の終わり
この50年間で、政治、科学、世界観、慣習、芸術、戦争は変化した。しかし、経済はほとんど変化しなかった。
確かに、第2次大戦後の経済発展は急速だった。だが、それは、それまでの50年間になされた発明を基礎とした技術に基づいていた。
1870年代には、電球と写真術が発明された。1880年代には自動車が生まれ、1903年には飛行機が、1912年には真空管が生まれた。
今日の産業のほとんどは、第1次大戦前の半世紀になされた発明の延長線上にある。そしてこの継続性が、その後の産業構造に安定をもたらした。すなわち、この半世紀は「継続の時代」だった。
しかし今や、経済も技術も「断絶の時代」に入っている。
この断絶は、これからを考える上で大きな意味を持つことは間違いない。断絶は、すでに起こったことと、これから起こることとの相乗作用である。近未来を形作ることになるものが、断絶である。
主な断絶は、4つの分野に見られる。
- ①新技術、新産業が生まれる。同時に、今日の重要産業や大事業が陳腐化する。この50年間の成長産業は19世紀半ば以降の発明発見に基づいていたが、これからの新産業は20世紀前半の知識によって興る。例えば量子物理学、生化学、心理学、記号論理学の知識である。
- ②世界経済が変わる。今なお経済学と経済政策は主権国家を単位とした国際経済を前提とするが、すでに世界経済はグローバル経済になっている。
- ③社会と政治が変わる。いずれも多元化する。今日あらゆる社会問題の解決が組織に任されているが、最大の中央集権組織である政府に対する幻滅が広がり、その能力が疑問視される。
- ④最も重要なこととして、知識の性格が変わる。すでに知識は、中心的な資本や資源を意味するようになった。
では、これらの断絶は、具体的にどのようなものなのか、詳しく見ていくことにする。
起業家の時代
先進国において今後の経済発展をもたらすものは、これまでの100年間の発展をもたらしてきた産業ではない。それらの産業は、すでに成熟産業になっている。
誕生する新産業
1850年から70年にかけて、経済の重心は石炭、繊維などの産業革命をもたらした産業から、鉄鋼、電力、自動車などのいわゆる近代産業へ移行した。その100年後の今日、再び経済の重心は、新しい技術、科学、世界観に基づく新産業へと移行する。