2019年4月号掲載
それをお金で買いますか 市場主義の限界
Original Title :WHAT MONEY CAN'T BUY:The Moral Limits of Markets
- 著者
- 出版社
- 発行日2014年11月15日
- 定価880円
- ページ数334ページ
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著者紹介
概要
インドの代理母による妊娠代行が6250ドル、米国へ移住する権利が50万ドル。今日、あらゆるものがお金で取引される。市場の論理では、問題ない。だが、何かおかしい ―― 。道徳的な問題をはらむ売買の例を通じ、お金で買うべきではないものについて考える。問いかけるのは、「ハーバード白熱教室」のマイケル・サンデル氏。
要約
市場と道徳
世の中にはお金で買えないものがある。だが、最近ではあまり多くはない。今や、ほとんどあらゆるものが売りに出されている。例えば ――
- ・刑務所の独房の格上げ(一晩82ドル)
- ・インドの代理母による妊娠代行(6250ドル)
- ・アメリカ合衆国へ移住する権利(50万ドル)
我々は、ほぼあらゆるものが売買される時代に生きている。しかし、慎重に選択して、こうした状況に至ったのではない。そろそろ、こんな生き方がしたいのかどうかを問うべき時がきている。
市場勝利主義の時代
2008年の金融危機に至るまでの数年間は、「市場勝利主義の時代」だった。この時代が始まったのは、1980年代初頭、ロナルド・レーガンとマーガレット・サッチャーが自らの信念を公にした時のことだ。「政府ではなく市場こそが、繁栄と自由のカギを握っている」と。
しかし、今日、その信念は疑われている。
市場勝利主義の核心にある道徳的欠陥は「強欲さ」で、それが金融危機を招いたという人がいる。
だが、これは一面的な診断に過ぎない。この30年の間に起こった決定的な変化は、強欲の高まりではない。市場と市場価値が、「それらがなじまない生活領域へと拡大した」ことだ。
例えば、営利を目的とする学校、病院、刑務所の急増。民間軍事会社への戦争のアウトソーシング。さらには、公園や公共の場の「命名権」の販売、発展途上国の代理母への妊娠の外注、企業や国家による環境汚染権の売買…。
30年前は、健康、教育、公安、国家の安全保障、環境保護、生殖、その他の社会的善の分配に、市場を利用することはなかった。だが今日では、それが当然のことと考えられている。
こうした状況に対処するには、強欲さを罵るだけではすまない。社会における市場の役割を考え直す必要がある。そのために、市場の道徳的限界を考え抜く必要がある。「お金で買うべきではないもの」が存在するかどうかを問う必要がある。
すべてが売り物
すべてが売り物となる社会に向かっていることを、心配するのはなぜか。理由は2つある。
1つは、「不平等」に関わるものだ。