2004年6月号掲載
【プロフェッショナル講座】営業力 「顧客の心」に処する技術と心得
著者紹介
概要
「人間と組織を売り込む力、それが営業力である」「営業力とは、“商談のアート”である」…。著者らしい印象深い言葉で、“営業力”の本質とそれを磨くために何をすべきかを語っている。営業力とはノウハウなのではなく、細心の配慮が求められる技術であり、顧客の心に向かい合う心得でもあることが、素直に納得できる。実践的な“商談の進め方”も参考になる。
要約
営業力とは「商談のアート」である
「営業力」とは何か? それは一言で言えば、「人間と組織を売り込む力」のことである。
営業力を「商品やサービスを売り込む力」だと思っている人は、まずその発想を切り替えるべきである。
なぜなら、営業力の原点は、商品もサービスも無いところから始まるからだ。
例えば、会社を起こして、ある商品を開発し、営業活動を始める。だが、なかなか売り込めない。何の実績もない会社、商品なのだから、ある意味では当然だ。それでも諦めずに訪問し続ける。そして、ある日、顧客が言ってくれる。「あなたの熱意には負けた。その商品を使ってみましょう」。
それは商品が初めて売れた瞬間だが、本当に売れたのは商品ではなく、人間である。「あなたの熱意には負けた」という言葉がそれを教えてくれる。
ここに商売の原点、営業力の原点がある。
すなわち、営業力の原点は、何よりも、「人間」を売り込むことから始まるのだ。
人間を買っていただくことで、その人間が働く組織を買っていただく。その人間と組織への信頼によって、顧客に商品を買っていただく ── 。
プロフェッショナルとして、営業力を磨きたければ、この原点をまず見つめなければならない。
では、いかなる場で、顧客に人間と組織を売り込むのか? それが「商談」である。
ここで大切なのは、「売り込む」という言葉を使う時の心構えだ。この言葉は、決して「顧客に売りつける」という発想で使うべきではない。