2005年5月号掲載
新時代の相続税対策の徹底検証
著者紹介
概要
「相続税対策のために、借金をしてアパートやマンションを建てる」―― 。これは有名な話だが、これらの“定番の対策”がもはや破綻している、と本書は指摘する。ここ数年に実施された税制改正の解説から始まり、不動産管理会社や養子縁組を活用した対策、海外や生命保険を利用した対策など、“新時代”の相続税・贈与税対策のほとんどを網羅した1冊。
要約
今までの相続税対策は通用しない!
「ローンを組んでアパートを建設して相続税対策」—— 。
このキャッチフレーズは、昭和60年頃から始まった地価の上昇が弾みとなり、バブル期の相続税の節税対策として一大ブームともなった。
だがバブルも崩壊し、そのつけが多く残った。特に地主を苦しめたのは、地価の下落ほど路線価や固定資産税評価額が下がらなかったことだ。
また、デフレが進み、賃貸収入が減少して、借入金を返済できなくなったり、相続税を払えなくなったりという深刻な社会問題にもなった。
何とかして、相続税対策に係る資産を組み換えようとしても、銀行など金融破綻の懸念、ペイオフのリスク、株価や経済の先行き不安などから、何も手を打てず右往左往するばかりだ。
そんな中、平成17年から始まった本格的な個人課税の強化から、否応なしにその対応が迫られている。
株式の交換・移転制度、企業組織再編制度、不動産の証券化、相続時精算課税制度の導入…。21世紀になって立て続けに改正が行われたが、これらを考えると、もはや従来の相続税・贈与税対策では、効果は期待できない —— 。
「相続時精算課税制度」とは?
1400兆円を超える個人の金融資産の大半は、高齢者層が保有しているといわれる。この資産を若年層へ移転させることが経済活性化につながると考え、その対策として平成15年度税制改正で創設されたのが、「相続時精算課税制度」である。
これは、「65歳以上の親から20歳以上の子への生前贈与財産は親の相続財産に合算されるが、その際に納めた贈与税は、親の死亡時に納める相続税額から差し引くことができる」という全く新しい制度である。
一方、生前贈与と遺産相続に別々に課税する従来の暦年型の課税制度も残され、どちらの制度を使うかは納税者の選択に委ねられている。