2006年2月号掲載

「貞観政要」のリーダー学 守成は創業より難し

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著者紹介

概要

中国の長い歴史の中でも、屈指の名君として知られる唐の太宗・李世民。その太宗と重臣たちとの問答を通じて、政治の要諦をまとめた『貞観政要』は、北条政子や徳川家康も愛読し、多くの歴代天皇がその御進講を受けたという“帝王学の原典”である。全10巻40篇から、さわりを抽出し、現代語訳を付した上で、わかりやすく解説する。

要約

創業か守成かを問う

 中国の長い歴史の中でも屈指の名君として知られる、唐王朝の2代目太宗・李世民。『貞観政要』は、その太宗にまつわる古典である。

 内容は、太宗と重臣たちとの間で交わされた政治問答を中心に編まれており、それらの問答を通して、彼らの覚悟と真摯な姿勢が余さず説き明かされている。

 中でも、最も有名なのは「創業か守成か」の問答である。

 貞観10年、太宗が側近の者に尋ねた。

 「帝王の事業の中で、創業と守成といずれが困難であろうか」

 宰相の房玄齢が答えた。

 「(前略)創業の方が困難であると思います」

 重臣の魏徴が反論した。

 太宗がおもむろに語った。

 「房玄齢は、昔、私に従って天下を平定し、(中略)九死に一生を得て今日あるを得た。そなたにしてみれば、創業こそ困難であると考えるのも、もっともなことである。一方、魏徴は私と共に天下の安定をはかりながら、今ここで少しでも気持をゆるめれば、必ずや滅亡の道を歩むに違いないと心配している。だから、守成こそ困難であると申したのであろう。さて、翻って考えれば、創業の困難はもはや過去のものとなった。今後はそちたちと共に心して守成の困難を乗り越えていきたい」

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