2006年2月号掲載
なぜ、「できる人」は「できる人」を育てられないのか?
著者紹介
概要
「名選手は名監督にあらず」という言葉の通り、仕事の「できる人」が、部下を「できる人」に育てることが上手かといえば、意外に、そうではない。なぜ、優秀な人は優秀な部下を育てられないのか? リーダーシップ開発やチーム作りの現場に携わる著者が、その理由を明らかにしながら、「できる人を育てる人」になるためのコーチング・ノウハウを公開する。
要約
「できる人」の弱点とは?
名選手は名監督にあらず。プロ野球の世界では昔からそういわれている。これと同様のことは、会社組織においてもいえる。プレーヤーとして優秀な人が、他の優秀なプレーヤーを育てられるかというと、思うようにいかない。
なぜ、できる人の率いる集団は、できる組織にならないのか? それは「できる人」と「できる人を育てることができる人」とは別であり、異なる資質や経験、モチベーションが必要だからだ。
「できる人」が陥る3つの罠
できる人は、次の3つの罠に陥りやすい。
①抜きん出た能力で頑張りすぎる罠
できる人を見て、我々は「頑張ったからこそ、結果が出たんだ」と考える。だが実は、そういう人たちの背後には、普通以下の人たちよりも頑張れる理由が潜んでいる。
ポテンシャルの高い人は、やれば成果が出そうだという感触を速やかに抱く。好ましいイメージを持てれば、理想像に沿って身体が動き始める。望みのゴールにたどり着ける手応えを持っているからこそ、それがない人よりも頑張れるのだ。
また、達成感を味わったできる人は、次のチャレンジに意欲を燃やす。この時点で周囲とのやる気の差、自信の差は開いており、できる人のワンマンショー化が進む。服従するだけの部下は、自分と彼との差を感じ、「できない自分」を意識せざるを得なくなっていく。
このようにして、できる人は、自分が頑張ることによって、周囲に刺激を与えるどころか、逆に無力感を植えつけてしまうことがある。
さらに、できる人は、周囲の人に説明している暇があったら、「自分でやった方が速い」とさっさと仕事を片づけてしまおうとする。だがそれは、「できない人」を放ったらかしにして仕事を進めることで、仕事の手順をブラックボックス化してしまうことを意味している。
②成功体験に基づく信念の罠
できる人とは、どんな世界でも持続的に高い成果を出している人である。そういう人には、いわゆる“勝利の方程式”ができてくる。
善意のできる人は、苦戦しているできない人に対して、自分の中にある勝利の方程式を提供する。それは良かれと思ってやることだが、単に“自分のやり方を押しつけている”だけ、という結果に終わることも少なくない。
また、できる人には、到達できると思えない目標を現場に与える人が多い。