2019年8月号掲載
任せるリーダーが実践している1on1の技術
著者紹介
概要
「1on1」とは、上司と部下が、用事がなくても定期的に行う1対1の対話のこと。会社と社員の絆を深め、高業績につながるとされ、グーグル、ヤフーなどのIT企業が採用し、成果を挙げている。この1on1の導入を支援する著者が、効果や目的、管理職に必要なスキルなどを紹介。実践に役立つ知識を体系的に述べた、使える1冊だ。
要約
1on1って何だろう?
今、「1on1ミーティング」が注目されている。
これは、「上司と部下の間で、週1回~月1回、30分~1時間程度、用事がなくても定期的に行う1対1の対話」である。シリコンバレーを中心に、米国では多くの企業が1on1を実践している。
期待される効果
1on1により期待される効果として、まず「会社と社員のエンゲージメント(絆・愛着)」がある。
グーグル社が実施した、高業績チームの秘訣を探るプロジェクトで明らかになったことがある。それは、高業績に最も大きく影響を与える因子が「心理的安全性」であったことだ。
「誰もが均等に話す機会がある」「自由に意見が言える」「否定されない」、これらの条件があることで初めてチームの業績が高まるのだ。
このように、心理的安全性が業績に影響を与えることが明らかになったからか、近年、エンゲージメントが注目されている。絆・愛着が高まれば、次のような様々な副次的効果が期待できる。
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- ・組織のアジリティ(俊敏さ)とスピード向上
- ・意欲向上
- ・スキルアップ
- ・問題の早期発見
- ・リテンション(人材の維持・離職防止)など
1on1の目的とは:2つのサイクルを回せ
1on1の目的は、短期的な業務の課題解決ではない。中長期的な自立的人材の育成、およびエンゲージメントの構築にある。
その際、留意したいのが、次の2つのサイクルだ。
・経験学習サイクル
1つ目は、デビッド・コルブが示した「経験学習サイクル」である。人は知識から学ぶのではない。経験から知識が導き出された時に、初めて深い学びが起きる。私は、経験学習サイクルを活用するために、上司が1on1でできることを「質問」「要約・言い換え」「勇気づけ」「任せる」と、4つの役割で定義している。
まずは部下が仕事を通じて、成功や失敗などを経験し、それを内省する。内省を支援するのが「うまくいったポイントは何か?」「どうすれば失敗を避けることができたのか?」といった上司の「質問」である。すると、「あの時に早めに関連部署に相談すれば良かったな」などと、部下の頭の中にあるナレッジが引き出される。
だが、それらはうまく言葉にならないことも多い。そんな時、上司は部下の言葉にならない思いを察し「要約・言い換え」で概念化を支援する。