2021年8月号掲載
LEADER'S LANGUAGE 言葉遣いこそ最強の武器
Original Title :Leadership Is Language
- 著者
- 出版社
- 発行日2021年6月11日
- 定価2,200円
- ページ数374ページ
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著者紹介
概要
「やり遂げろ!」「これを終わらせよう」…。職場のリーダーが発する言葉には、「行動」を促すものが多い。一方、少ないのが「思考」を促す言葉だ。しかし、仕事の効果を高めるには、状況に応じて思考と実行を行き来する必要がある。そのためにリーダーが知っておきたい行動様式と言葉を伝授。言葉を変えれば、世界が変わる!
要約
貨物船エルファロを沈没させた言葉
2015年9月29日火曜日、午後8時6分。貨物船〈エルファロ〉は、33名の船員とともに、いつものようにフロリダ北東部からプエルトリコの首都サンフアンに向けて出港した。
その頃、船の通り道となるバハマ諸島付近の大西洋で、ハリケーンが発生。風速は時速208kmを上回り、甚大な被害をもたらす恐れがあった。
いつもの大西洋直行ルートは最短コースだが、ハリケーンに最も近づく。それとは別にオールドバハマ海峡を通るルートもあるが、こちらは遠回りになるので、8時間余計にかかる。だが、このルートを通れば、風や波の影響が和らぐ。
危険なルートを選んだ〈エルファロ〉
水曜日の午前7時2分。〈エルファロ〉がバハマ諸島に近づくと、船長は大西洋ルートをとると決断し、嵐が直撃する側の航路を進み始めた。
なぜ危険なルートを選んだのか? それが早く着くルートだったからだ。海上を進むだけではお金は稼げない。目的地に着き、積荷を降ろして初めてお金を稼げる。この理由から、商業船舶の船員は誰もが時計に従おうとする。時計に従っていると、時間内にやり遂げることが目的と化す。
船長が発した「強要」の言葉
木曜日の朝、〈エルファロ〉は全乗員とともに沈没した。幸い、国家運輸安全委員会が沈んだ場所を特定し、ボイスレコーダーを回収した。そのおかげで、船長と船員が実際に交わした言葉や行動をうかがい知ることができる。
例えば、船長は危険な大西洋ルートを選んだが、その決断はどのように下されたのか?
船長は一等航海士に「今回は耐えるしかないな」と告げた。これで決断は下された。会話の記録に、決断の根拠となる話などは一切出てこない。
船長は船員に、次のような言葉をかけている。「我々は優秀だ」「大丈夫なはずだ。いや、『はず』ではいけない。大丈夫にするんだ」
船長の言葉は、どんな犠牲を払ってでも「やり遂げる」と語っていた。この種の言葉は、無敵だ。どんな懸念も表明できなくさせてしまう。そこには、「我々が進む道はもう決まっている」というメッセージが含まれている。
〈エルファロ〉の船長と船員の命運が尽きたのは、特定の行動様式(プレー)を実行し、特定の言葉を使うことが身体に染みついていたからだ。