2006年10月号掲載
パブリックスの「奇跡」 顧客満足度全米NO.1企業の「当たり前」の経営術
著者紹介
概要
従業員が、自分の仕事や組織に愛情を持ち続ける ―― 。これは、企業にとって最も難しい課題の1つであり、それに成功することは奇跡にも思える。だが、そんな奇跡の企業がある。本書で紹介される米国のスーパーマーケット、パブリックスだ。同社が従業員をはじめ顧客、地域など、関係者全てに愛され続けるのはなぜか、その秘密を現地取材をもとに解明する。
要約
「奇跡」の企業の軌跡
米国のフロリダ州レイクランドに本社を置くパブリックス・スーパー・マーケッツ社。
同社は、売上高206億ドル(2兆3690億円)、店舗数876店、従業員数13万5000人という巨大スーパーマーケット・チェーンだ。(2005年度)
株式未上場企業としては米国で第5位(04年度)の企業であると同時に、創業75年以上という歴史の古い企業でもある。
一方で同社は、毎年発表される「米国顧客満足度指数」のスーパーマーケット部門で、12年連続で最高点を獲得、第1位に輝いている。
また、『フォーチュン』誌が発表している「働き甲斐のある会社ベスト100社」では、9年連続でベスト100に入り、殿堂入りを果たしている。
そんな「奇跡」の企業ともいえるパブリックスが誕生したのは、1930年、世界恐慌が起きた翌年のことだった。創業者は、当時23歳のジョージ・W・ジェンキンス。
彼が造ったのは、セルフサービスの食料品店であった。現在の日本のコンビニエンスストアよりも小さな店だったが、それは成功を収めた。
成功の要因は、「店をきれいにし、品揃えをよくし、接客をよりよくしようと努めた」ことだった。
ジェンキンスは後に、次のように述べている。
「床を磨いて、商品のほこりを払う。レタスから萎れた葉を取り、(中略)来店されたお客様に笑顔を振りまく。そうやって、お客様を喜ばせることが、成功のカギだと悟るようになりました」
景気が良くない時代にもかかわらず、顧客の支持を得、堅調な売上を上げたパブリックスは、35年に第2号店を開店する。一方で、ジェンキンスは、従業員への成果配分を実施した。