2010年8月号掲載
すべては人なんだ
著者紹介
概要
著者の大久保恒夫氏は、2007年にスーパーマーケット・成城石井の社長に就任。悪化していた業績を回復させ、09年には利益率6%という高水準を実現させた。その氏が、自らの経営哲学を説く。「人員削減はしない」「ディスカウント戦略は採らない」「間接人員を増やす」など、世の常識の逆を行く経営哲学は、小売業に携わる者に大きな示唆を与えてくれる。
要約
小売業は「人」が全て
私はイトーヨーカ堂で10年間勤務した後、コンサルタントとして、ユニクロや無印良品などの経営改革に取り組んできた。
2007年には、成城石井の社長に就任。経営改革の結果、2009年12月期末で売上高500億円、30億円の黒字、利益率6%を達成した。
どうやってこうした結果を生み出したのか、その成功の秘訣を語ると ――
人を成長させると企業が成長する
まず、経営改革においては、人員削減という経費削減はしない。また、ディスカウント戦略は非常にリスキーなので採用しない。
そして、小売業では「お客様にとってどれだけの価値を提供できるか」が重要だ。価値を創造することで、小売業は発展する。そう断言できる。
小売業の企業価値は「売場」にある。売場がいかにお客様に満足されているのか、ということだ。
では、「お客様に満足される売場」はどうやって作るのか? それは、人が作るしかない。
売場の人が、「お客様に満足される売場を作ろう」という気になるかどうか。それが全てである。
従って、社員にどのような教育をするのか、意識、モチベーションをどうやって上げていくのかが、小売業にとって一番重要である。
経営者の指示が売場で実行されているか?
お客様に満足される売場を作るという「行動」が、「実行」されるようにすることは難しい。
実際、どこの小売業でも、本部の商品部から「これを売り込めば売れる」といった指示が出ている。にもかかわらず、店頭でそれが実行されていない。だから、成果につながらない。