2010年11月号掲載
売れ続ける理由 一回のお客を一生の顧客にする非常識な経営法
著者紹介
概要
著者の経営するスーパー「主婦の店・さいち」は、希有な店である。過疎の町にあるため市場規模は小さく、交通の便もよくない。しかも、周囲には大型スーパーなどのライバル店が立ち並ぶ。にもかかわらず、全国から客が訪れる。なぜ、同店は消費者を引きつけるのか? 小売業の本来あるべき姿を愚直に追求し続ける著者が、その経営哲学を語る。
要約
過疎地の小さな店に人が集まる理由
「主婦の店・さいち」は、売場面積260m²、大きめのコンビニ程度の小さなスーパーである。
店があるのは仙台市の中心部から車で30分ほど行った、温泉地として知られる秋保の町。人口わずか4700人程度の過疎地だ。
商圏人口が少ない上、車で10~15分圏内にはライバル店が10店舗くらいある。
ところが、そんなお店に地元以外からも大勢のお客様が集まってくる。それはなぜなのか ―― 。
お客様の声から生まれた、主力商品の「おはぎ」
さいちはスーパーだが、一番よく売れている主力商品はおはぎである。従業員手作りのオリジナル商品で、「秋保おはぎ」の名前で販売している。
このおはぎは平均で1日5000個、土日休日には1万個以上、お彼岸の中日には2万個も売れる。この状態がもう20年近く続いている。
おはぎ作りのきっかけは、お客様に相談を受けたことだった。自分で作ったが、うまくできない。それで、「おたくで作れない?」と頼まれたのだ。
さいちでは、以前からお惣菜を手作り販売しており、お客様から「こんなおかずが食べたい」というリクエストがあると、それに応えてきた。おはぎ作りもその一環だった。
どんなお客様の声にも、本物を作ることでお応えする。これがさいちの一貫した姿勢なのである。
おはぎ作りには、調理場を任せている専務(私の家内)が当たり、1カ月ほど試行錯誤を重ねた末、今の味に仕上げた。
おはぎには、添加物は一切使っていない。