2009年12月号掲載
利益第二主義 過疎地の巨大スーパー「A-Z」の成功哲学
著者紹介
概要
近年、景気後退で消費が冷え込む中、業績を伸ばしているスーパーがある。鹿児島県の過疎の町で展開する、24時間営業の巨大スーパー「A-Z」だ。効率を無視した生活必需品のオール品揃え、本部に商品部やバイヤーを置かない、集客チラシは年に数回…。従来の小売業界にない、常識外れの発想で躍進を続ける同社の創業者が、そのユニークな経営哲学を披露する。
要約
過疎地で奮闘する巨大スーパー
1997年3月、人口わずか2万7000人の鹿児島県阿久根市にA-Zスーパーセンター(現A-Zあくね)が開店した。
日本初の24時間営業の大型小売店で、売り場面積は平屋建て1万1650m²、商品点数23万点、駐車台数1500台、敷地面積は東京ドーム3.6個分に相当する17万m²だ。
開店から12年経った現在、A-Zあくねの年商は100億円を突破。年間650万人、1日平均1万7000人の客が来店している。
2005年には2号店の川辺店(現A-Zかわなべ)を開店。当時、薩摩半島の山間部に位置する川辺町の人口は1万4000人と、阿久根市よりも少なかった。町民の3人に1人は65歳以上で、過疎化と高齢化が進んだ不便な地域である。
―― 過疎地に24時間営業の大型店を開く。
この小売業の常識から逸脱した経営で、景気後退で消費が冷え込む中、A-Zは業績を伸ばしている。世界的経済危機の影響が深刻だった08年秋から09年初めにかけても、上記2店の売上は前年同月比2桁パーセント増で推移した。
こうしたことから、今、A-Zの経営が注目を集めている。
地域のインフラ整備がA-Zの役割
大手のチェーンストアは、人口が多い地域、発展しそうな地域に出店するのが常識だ。こうした小売業の常識を疑うことがA-Zの第一歩となった。
少ない人口で、店の経営を成り立たせるには、顧客に頻繁に買い物に来てもらえる店でなければならない。そのためには、生活必需品を中心とした店にしよう、顧客が要求する生活関連用品をフルラインで揃えれば重宝がられるだろう…。
このように考え、たどりついた結論は、「生活必需品が1カ所で全て揃うワンストップの店舗。いつでも安さを追求するエブリデイ・ロー・プライスの店舗。いつでも買い物ができる年中無休の24時間営業の店舗」だった。
過疎地に大型スーパーを造るということには、道路や上下水道などに準ずる、インフラ整備に近い意味がある。その店があることで、地域の人々は衣食住に困らない生活ができる。こうした発想が、後に開業するA-Zの大きなテーマとなった。