2008年7月号掲載
金融権力 グローバル経済とリスク・ビジネス
- 著者
- 出版社
- 発行日2008年4月22日
- 定価858円
- ページ数242ページ
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著者紹介
概要
世界経済に激震を与えたサブプライムローン問題。その背後には、「金融複合体」とも呼ぶべき構造的権力の姿がある ―― 。金融の現状を憂える著者が、この権力の実態に迫るべく、1990年代に加速した「金融革命」を解剖し、そして金融の自由化が生んだ「リスク転売ビジネス」の根本的な欠陥を明らかにする。さらには、今後の国際金融の行方についても占う。
要約
「金融権力」とは?
1997年に発生したアジア通貨危機を分析した国際経済学者J・バグワッチは、「ウォール街・IMF(国際通貨基金)・ワシントン複合体」という言葉を創った。兵器産業と軍隊による「軍産複合体」にならった言葉である。
彼は、この「国際的な金融複合体」が一体となって世界中で推し進める「ワシントン・コンセンサス」の危険性について警鐘を鳴らした。
ワシントン・コンセンサスとは、「資本の自由な国際的移動こそが、世界の経済社会を繁栄させる」という信念を共有し、資本の国際間の自由化を進めることを目指す政治的経済的合意を指す。
だが、そうした自由化措置は世界中に投機的経済を広めてしまった。
バグワッチはそのことを厳しく非難した。資本の自由な移動の積極的効果について、経済理論では証明されていない、と。
本来、金融という言葉には、「金(カネ)を融通する」という意味がある。この言葉から、カネは社会的に必要なものを作り出すために使用されるべきであるという含意を読みとることができる。
だが金融複合体は、金融を、金儲けをするための切り札にした。その結果、人々の金銭的欲望を解放してしまう金融システムが作り出されてしまった。カネがカネを生むシステムがそれである。
そうした金融システムが、現在「金融権力」として猛威を振るっている。
金融世界の帝王「格付け会社」
例えば、「レーティング・エージェンシー(格付け会社)」が、巨大な力を持っている。
この格付け会社は世界に数多くある。75年、米国証券取引委員会(SEC)は、そのうち有力な格付け会社にNRSROという「お墨付き」を与えた。
NRSROとは、「全国的に(Nationally)、認められた(Recognized)、統計処理をする(Statistical)、格付け(Rating)、組織(Organization)」の頭文字をとったものだ。