2021年12月号掲載
データエコノミー入門 激変するマネー、銀行、企業
- 著者
- 出版社
- 発行日2021年10月28日
- 定価1,089円
- ページ数251ページ
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著者紹介
概要
これまでの世界をコントロールしてきたのは、資金力や権力だった。今、それが変わりつつある。今後、重要になるのはデータだ。とりわけ、「マネーのデータ」に注目すべきだと本書は指摘。データを制する者が世界を制する ―― 。そんな「データ資本主義」と呼ぶべき新たな経済の仕組みを、野口悠紀雄氏が平易に解説する。
要約
加速する「データ資本主義」
いま世界では、「データ資本主義」と呼ぶべき活動が急加速している。それを示すのが、次のような驚くべき数字だ。
Alphabet(Googleの持ち株会社)の2021年6月の時価総額は、約1.7兆ドル。Facebookのそれは約1兆ドル。2社を合計すると、約2.7兆ドル(約300兆円)になる。
この2社に、Amazon、Apple、Microsoftを合わせた企業群は「GAFA+M」と呼ばれる。この企業群が、いまアメリカ経済を牽引している。GAFA+Mの時価総額は、2021年4月2日時点で約7.5兆ドル(約832兆円)。8月末には、GAFAの時価総額が日本株全体の時価総額を上回った。
中国の巨大IT企業も同じような状況だ。Baidu(百度)、Alibaba(阿里巴巴集団)、Tencent(騰訊)の3社は「BAT」と呼ばれる。Baiduは検索とAI技術、AlibabaはEコマース、TencentはSNSのサービスをそれぞれ提供している。
ビッグデータが価値を生む
GoogleやFacebookなどの驚くべき価値を生み出している要因は、ビッグデータにある。ビッグデータは、1つ1つを取ってみればあまり価値がないデータだ。しかし、こうしたデータが蓄積され、膨大な量になれば、それをもとに無から有を生み出すようなことが可能になる。
これらの企業のビジネスモデルは、データを資本として収益を生み出す、というものだ。データさえあれば、工場や店舗を持たなくとも、巨額の収益を上げることが可能になった。しかも、データは何度でも繰り返し使うことができる。
ビッグデータを活用できるかどうかが、将来の経済活動の成否を決める。いまアメリカと中国にしかこれができていないのは、世界の将来を考える上で深刻な問題である。
そして、これは単に経済活動の一部で起きている現象ではなく、私たちの日常生活にも密接に関連する問題だ。にもかかわらず、何が起きているか、我々は必ずしも十分に理解していない ―― 。
マネーを制する者がデータを制する
最近、「マネー」と呼ばれるものがいくつも登場している。その第一が「電子マネー」である。日本にも、PayPayなど多数の電子マネーがある。もう1つは「仮想通貨」(暗号資産)だ。2009年に登場したビットコインが有名だが、それ以外にも多数の仮想通貨が発行されている。
以上の他に、中央銀行が発行するデジタル通貨(中央銀行デジタル通貨)や、後述する「Diem」と呼ばれるデジタル通貨のように「法定通貨に対する価値が大きく変動しない仮想通貨」(大規模ステーブルコイン)の発行が計画されている。