2008年9月号掲載
次のグローバル・バブルが始まった! 国際マネーはこう動く
著者紹介
概要
サブプライム危機は終わった! 著者であるゴールドマン・サックス投信元社長・山﨑養世氏はこう断言する。そして、この問題は世界不況の引き金になるのではなく、実は、新興国を中心とした世界規模の「グローバル・バブル」を生み出すと指摘。世界経済がサブプライム・ショックを契機に再び成長を加速させ、バブルへと向かうそのメカニズムを詳しく解説する。
要約
新しいグローバル・バブル
サブプライムローン問題を発端とする米国の「不動産バブル崩壊」は、恐らく今後2~3年にわたって、米国経済を圧迫し続けるだろう。
それは、たぶんヨーロッパにも飛び火する。そのため、先進諸国の経済成長は2007年までの過去数年に比べて低めに推移すると見られる。
しかし、それをもって投資家が「これからしばらくは海外への株式投資は控えるべきだ」と考えるのは大間違いだ。ここで国際投資をやめれば、絶好の投資機会を逃すことになる。
ドルキャリー取引によってバブルが生まれる
なぜか? それは、「先進国共通の経済低迷」というまさにその理由によって、新興工業国にはかつてないバブルが生まれるからである。
不動産不況が欧米の金融機関の経営を圧迫し、景気も低迷させる。そのため欧米では低金利を維持せざるを得ないが、それにより新興工業国に向かう、世界的な新しい資金の流れが生まれるのだ。
この新しい世界的な資金の流れは、「ドルキャリー取引(トレード)」と呼ぶべきものである。
1990年代以降、終始低金利だった円資金を借りて、世界市場で投資運用することが「円キャリー取引」と呼ばれた。
しかしこれからは、円キャリー取引に加え、ドルを借りて、高い経済成長の見込める諸国に投資してゆくドルキャリー取引が一斉に始まる。
ブラジルやロシア株は今、沸騰前夜!
その資金の行く先は、今、過小評価されている新興国の株式である。
例えば、ブラジルのサンパウロ証券取引所の主要株価指数であるボベスパ指数を見ると、02年初めは1万だったが、08年5月には7万にもなっている。
だが、これはまだバブルとは言えない。それは、株価が1株当たり利益の何倍かという株価収益率(PER)を見れば明らかだ。サンパウロ証券取引所の上場企業の平均PERは、株価が史上最高を更新し続けた5月の時点で16倍でしかない。