2009年2月号掲載
挑戦 我がロマン 私の履歴書
著者紹介
概要
総売上9兆円の流通グループを率いるセブン&アイ・ホールディングスのCEO、鈴木敏文氏。日本初のコンビニチェーンの創業をはじめ、氏の人生は新たな挑戦の連続であった。過去の延長線上でなく、一歩先の未来から何をすべきか考える ―― 。この“ブレイクスルー思考”を実践し続けた日々が、氏自身の口から語られる。挑戦することの大切さに気づかされる1冊だ。
要約
挑戦し続ける人生
総合スーパーのイトーヨーカ堂に入社したのは1963年、30歳の時だった。ただし、流通の仕事がしたくて、この世界に入ったわけではない。
大学卒業後、出版取次大手の東京出版販売(現トーハン)に就職し、弘報課で仕事をしていた。その時、知り合った仲間たちと起業を計画し、スポンサーになってもらおうと訪ねたのがヨーカ堂で、なりゆきで転職することになった。
結果的に起業は実現不可能になったが、辞めるに辞められず、いつの間にか一生の仕事になった。
人には色々な生き方がある。今日までこうだったから、これからもこうしていこうという過去の延長線上で生きる生き方もあれば、明確な目標を立て、そこに至る道筋を着実に歩む生き方もある。
一方、そのどちらにも属さない生き方がある。その時々に直面する物事に対して、「こうあるべきではないか」と目の前に未来の可能性が浮かんだら、それに懸命に取り組んでいく生き方だ。
振り返ってみれば、日本初のコンビニエンスストアチェーンの創業、決済専門のセブン銀行の設立など、常に新しいことに挑戦する繰り返しだった。
その都度「何か新しいことをやらなければならない」などと気負って考えたわけではない。いずれも、この状況においてはこうあるのが当然だと、自分なりの発想の必然から生まれたものだ。
なぜそう思ったのか。
一言で言えば、物事を過去の常識や経験で判断せず、世の中の変化を自分の目で見抜かねばならないという意識を、普通よりは多少強く持っていたからだろう。
セブン-イレブンとの出合い
60年代後半、スーパー業界は新規出店のたびに地元商店街から強い拒否反応を受けるようになった。そんな頃、海外研修で訪れたカリフォルニアで、セブン-イレブンと出合った。
小型のスーパーという印象だったが、帰国後、調べて驚いた。運営するサウスランド社は全米で4000店のチェーンを展開する超優良企業だった。