2013年11月号掲載
燃える闘魂
著者紹介
概要
今の日本に必要なのは、「燃える闘魂」である。それが企業のリーダーに欠けていたことが、閉塞感漂う経済社会をもたらした ―― 。こう喝破する稲盛和夫氏が、不屈不撓の一心で経営に当たることの大切さを説く。負けてたまるか! 強い思いを抱き、歯を食いしばり、経営に携わってきた氏の経営哲学は、混迷の時代を生き抜く勇気と指針を与えてくれるだろう。
要約
不屈不撓の一心を持つ
「なぜ、こうなってしまったのだろう」―― 。
バブル崩壊後、早急な経済再生が叫ばれながらも、はや四半世紀近くが過ぎた。景気停滞が続き、日本のGDP(国内総生産)は世界第3位に転落した。
一方、中国は飛躍的な経済発展を遂げ、日本を抜いて、世界第2位の経済大国へと上り詰めた。また、韓国は官民協力のもと、サムスンや現代(ヒュンダイ)に代表されるような企業が飛躍的な発展を遂げた。
これら近隣諸国の隆盛に比べ、近年の日本の経済、産業の低迷ぶりが際立つ。なぜ、このような逆転が起こったのか。一体、何が違ったのか。
それは、心の在りようの違いではなかろうか。
思い返せば、第2次世界大戦の敗戦により、日本の国土は焦土と化した。しかし、日本人は希望を失うことはなかった。焼け野原に敢然と立ち、1人1人が「何くそ」と歯を食いしばり、努力と創意工夫を続けることで、わずか20年余りで世界第2位の経済大国を実現したのである。
そんな輝かしい経済成長の立役者が、強く熱い「思い」を持った企業家たちであった。
松下幸之助氏、本田宗一郎氏、井深大氏など、強烈で高邁な思想の持ち主たちが、それぞれの事業活動に懸命に取り組んだ。中小企業の経営者たちもそうだ。経営資源に恵まれない中、歯を食いしばり、知恵を絞り出し、事業を伸ばしていった。
現在、業績低迷を続けている理由を、経済環境や市場動向などに求める経営者が多い。
そうではない。現在の日本経済、日本の社会にとって、何が一番足りないのか。
それは、不屈不撓の心である。どんな障害があろうとも、それを乗り越えていくという強い意志、勇気、気概が、日本企業のリーダーに欠けていたことが、現在の停滞感、閉塞感漂う日本の経済社会をもたらした真因ではないか。