2017年4月号掲載
グローバル・リーダーシップ講座 カルロス・ゴーンの経営論
概要
日産自動車を短期間で見事再生させ、いち早くEV(電気自動車)開発を進めるなど、組織、ビジネスを引っ張り続けるカルロス・ゴーン氏。そのリーダーシップとは、どのようなものか? 企業の幹部候補生対象の講座における氏との質疑応答をベースに、グローバル・リーダー、変革を導くリーダーのあるべき姿を明らかにした。
要約
カルロス・ゴーンのリーダーシップ
長く苦境にあった日産自動車は、カルロス・ゴーンCEOのリーダーシップの下で変革を遂げた。
成功したリーダーは、自分なりのリーダーシップ論を持っている。「ゴーンのリーダーシップ」とはどのようなものか、Q&A形式で見ていこう。
- 【Q】グローバル・リーダーの要件とは?
私が抱くグローバル・リーダーの人物像には、2つの側面がある。それは、社外の人々から見られる場合と、社内の従業員から見られる場合だ。
社外の人々に見られている時のグローバル・リーダーとは、言うならば、複数の言語を話し、多くの国に住んだことのあるようなリーダーだ。そして可能であれば、グローバル社会での経験を有する人物であることが、そのための要件である。
一方で、社内の従業員から見られる時の側面は、よりマインド的な部分がポイントになる。従業員が「自分たちのリーダーはグローバル・リーダーだ」とみなすかどうか。それは、そのリーダーが従業員に対して心をオープンにし、知りたい・学びたいという意欲にあふれ、ダイバーシティは強みだと考えるような人物かどうかにかかってくる。
さらに、会社にとり自国だけでなく世界こそが重要な市場であると思っていることも、従業員にグローバル・リーダーとみなされる上では重要だ。
- 【Q】CEOは、短期的なものの見方と、長期的なものの見方の間で悩まされるのではないか。
短期的な見方と長期的な見方についての最も良い例が、電気自動車(EV)をめぐる話である。
私どもは2006年に、EVを世に出すと発表した。すると、皆に笑われた。「航続距離が短い」「充電インフラがない」と、様々なことを言われた。だが、ぶれずに、2010年にEVの販売を始めた。
発表から10年が経って、状況はどうだろう。EVは、社会に必要なものと認識されている。10年前に発表したことが間違いではなかったことが、今、確かなものになっている。
強いCEOという時、その条件として、短期的な業績を上げられることがある。だが、短期的な業績を上げさえすればよいというものではない。それだけでは、会社が持続的に成長しないからだ。
短期的なパフォーマンスを高めながらも、長期的な視野を持って、会社の未来にとって何が重要になるかを考えなければならない。