2009年7月号掲載
ウォールストリート・ジャーナル発、米国金融危機の全貌
Original Title :The Wall Street Journal Guide to the End of Wall Street as We Know It
著者紹介
概要
2008年、世界の金融界を牛耳ってきたウォール街は壊滅的なダメージを受け、米国と世界の金融システムは様変わりした。その原因となった今回の住宅バブルはなぜ発生し、崩壊したのか? なぜ、投資銀行を中心に金融業界が暴走を続けたのか? 長年ウォール街を見続けてきた『ウォールストリート・ジャーナル』の元記者が、米国金融危機を総括する。
要約
リスクを克服したという錯覚
2008年、米国と世界の金融システムは様変わりした。大銀行が次々に潰れ、ウォール街の投資銀行は絶滅したも同然となった。
金融システムを救済するため、政府は7兆ドル以上もの巨費を、政府保証や貸付金の形で供給した。この金額は、米国のGDPの約半分に当たる。
なぜ、こんなことになってしまったのか?
単純に言えば、銀行も企業も個人も金を借りすぎ、その金を無分別な投資に回したからだ。
いつの時代も、金融危機は、強欲と自信過剰から生まれる。17世紀のオランダのチューリップ・バブルから最近のインターネット関連株のバブルに至るまで、強欲は常に非合理的な行動を促す。そして、その後、必ずバブルが崩壊する。
今回の危機の場合、強欲は非理性的な不動産購入を促した。欲に憑かれた銀行は、回収できそうにないほどの金を貸し出した。
自信過剰とは、投資家、借り手、貸し手が、慎重さを失うということであり、当てが外れた時の備えが少なすぎるということだ。
強欲と自信過剰が不動産バブルを生み、銀行も個人も借金の洪水に飲み込まれたのだ ―― 。
リスクに対する不安が薄れていった20年
現在の金融危機に先立つ20年間、リスクについての不安は着実に薄らいできた。
例えば、1987年の“ブラックマンデー暴落”の時、市場はあっという間に回復したので、「下げは買い」という相場の格言が信用を得た。
株式市場は下げてもいずれ回復するから、下げ相場で買い進むことは理に適っている、という考え方だ。