2009年10月号掲載
技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか 画期的な新製品が惨敗する理由
著者紹介
概要
液晶やDVDなどの家電製品は、いずれも日本企業が優れた技術を基に開発し、当初、圧倒的なシェアを誇った。しかし、市場の拡大に伴ってシェアは急減し、今は見る影もない ―― 。なぜ、このようなことになるのか? その背景には“イノベーションモデル”の変容がある、と著者は指摘。インテル、アップルの成功例を基に、新しいイノベーションのあり方を説く。
要約
新しいイノベーションモデル
今、世界そして日本の半導体産業は悲惨な状況にある。日本の大企業の半導体部門は軒並み何千億円もの赤字で、本体の経営を揺るがしている。
しかし、そんな中、高収益を維持している企業がある。インテルだ。なぜ、同社は強いのか?
パソコンという戦場での闘い方を熟知し、その上で、「市場の拡大」と「収益の確保」を同時に達成する見事な戦略を描き、遂行しているからだ。
そして、このインテルの例と全く同じ戦略パターンで、液晶でもDVDでも日本は負けている。
日本には技術力があるのに、事業で勝てないのだ。なぜ、日本企業は負けパターンに陥ったのか?
実は、インテルのビジネスモデルを見ると、その“からくり”がわかる。
インテル・インサイド型
インテルの作る中央演算装置(MPU)は、世界の大半のパソコンで使われている。しかも、高収益を上げ、世界のパソコンを牛耳っている。
なぜ、MPUという「部品」がパソコンという「完成品」を従属させられるのか。
インテルは、それまではインテグラル型製品(部品間の相互調整を綿密に行うことによって創り上げる、摺り合わせ型製品)だったパソコンを、基幹部品であるMPUの急所技術を開発して、それを起点に、モジュラー型製品(部品を相互につなぐだけで済む組み立て型製品)に変えた。
そして、その製作ノウハウを台湾メーカーに渡して、廉価なマザーボードを製作してもらい、世界中に普及する作戦を進めたのである。
この「基幹部品主導」の画期的なビジネスモデルを、有名なキャッチフレーズにならい、ここでは「インテル・インサイド型」と呼ぶ。