2023年11月号掲載
新規事業着工力を高める
著者紹介
概要
日本企業は、新規事業に着工する力を強化すべき ―― 。ボストン コンサルティング グループの日本共同代表が、その力の高め方を説いた。新規事業に対する理解不足や共通認識の欠如など、着工を阻む原因は様々。これらを克服するための留意点を、新規事業の全体像と併せ提示する。自社の挑戦を加速させるヒントに満ちた1冊。
要約
新規事業の全体像を確認する
昨今、日本企業の新規事業の取り組みに勢いを感じられない。その背景には、「新規事業着工力」が低下していることがある ―― 。
「新規事業」とは何か
「新規事業」という単語は多様な使われ方をしていて、理解のレベルにバラツキが大きい。一方で、新規事業を適切に始めるには、新規事業に関する正しい理解と共通認識が必須であり、そこが不十分なために適切に着工できないことも多い。
では、新規事業とはどのようなものなのか? よく利用される「アンゾフのマトリクス」というフレームワークでは、「距離」をベースに新規事業を分類する。この枠組みでは、事業を「顧客・市場」と「製品・サービス」という2つの要素に分類し、既存事業からどれくらい距離があるかという観点から、4象限で事業を整理する(下図)。
新規事業の3つのタイプ
このフレームワークでは、既存事業との距離感から、新規事業を次の3つのタイプに分類する。
①新市場開拓系
今の製品・サービスを、新たな顧客・市場に展開させるというもの。例えば、既存製品を海外の特定の市場に展開するなどの取り組みである。
②新商品投入系
すでに対象としている顧客・市場に対して、新しい製品・サービスを投入していく新規事業。
例えば、アマゾンは当初は「書店」だったが、本以外のものも売り出し「総合小売業」になり、さらに音楽や映像などを配信する「コンテンツ事業者」へとビジネスを拡大していった。
③多角化追求系
顧客・市場、製品・サービスともに新規であり、未知の領域にチャレンジする新規事業。
例えば、バイクメーカーから出発した本田技研工業はその後、自動車事業に進出し、昨今では小型ビジネスジェット機事業に参入した。これは、顧客・市場、製品・サービスともに新規の領域にチャレンジする「多角化追求系」の典型例だ。