2009年11月号掲載
知的生活の方法
- 著者
- 出版社
- 発行日1976年4月20日
- 定価792円
- ページ数214ページ
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著者紹介
概要
上智大学名誉教授の渡部昇一氏が、自らの体験に基づき、知的生活を充実させるための実践的な方法を指南した書である。話は、本の読み方や情報整理の仕方といった基本にとどまらず、家や書斎の設計、散歩の効用、食事などの日常生活にまで及ぶ。示唆に富むその内容は、今も色褪せることなく、多くのことを我々に教えてくれる。
要約
自分をごまかさない精神
「最後に、最も大切なる訓……己に対して忠実なれ、さすれば夜の昼に継ぐが如く、他人に対しても忠実ならん」
これは、シェイクスピアが『ハムレット』の中で、老侍従長ポローニアスに語らせている教訓だ。
息子が旅に出る時に、この老侍従長は人生の知恵を次々に並べ立ててゆく。その中には、「借手にもなるな貸手にもなるな。借金は倹約の刃鋒を鈍くし、貸金は動もすればその元金を失いまたその友をも失う」という有名な教訓もある。
しかし老ポローニアス、つまりシェイクスピアは、そうした諸々の教訓よりも「己に対して忠実なれ」ということが大切なのだ、と教えている。
知的正直
では、「己に対して忠実なれ」とは、具体的にどういうことか。普通に解釈すれば、「良心に恥じないようにせよ」と解釈してよいだろう。
だがここでは、そうした倫理道徳的な面よりも、個人の進歩と向上という立場から解釈してみたい。
例えば、英語の場合、単語の意味がある程度わかっていれば、文脈を追わなくても、当てずっぽうで「こんな意味だろう」と言うことができる。
しかし、このやり方だと、やさしい英文でも意味の解釈が正確にできない。やはり入念に文脈を追う生徒だけが、正しい理解に至ることができる。
この「当てずっぽう」の英文解釈は、進歩をその時点で止めてしまうのではないかと思う。
英語には「知的正直(インテレクチュアル・オネスティ)」という言葉がある。わからないのにわかったふりをしない、という意味だ。
本当にわかったつもりでいたのに、それが間違いだった、ということはある。それは当てずっぽうの間違いとは違うから、間違うたびに進歩する。