2010年1月号掲載
「荘子」の人間学
著者紹介
概要
『荘子』は、様々な寓話を通して、世俗の価値観にとらわれない生き方を説いた中国の古典である。『老子』と並ぶ道家の代表的な思想書で、「道」という大いなるものの存在から人間の営みを見つめるのが特徴だ。この『荘子』の内容を、本書はわかりやすく解説する。ストレス社会を生きる我々に、視野を広げ、伸び伸びと生きるためのヒントを与えてくれる1冊。
要約
『荘子』に学ぶ
強さが弱さに転化する ―― 。近頃の日本を見ていると、そんなことが思われてならない。
ひところの日本は日の出のような勢いで成長を遂げた。それがここへ来て、低落状態の中に沈み、苦しんでいる。なぜ、こんなことになったのか。
人間について、『墨子』はこう語っている。
「人はその長ずる所に死せざるは寡なし」
人間は、その長所によって身を滅ぼすことが多いのだという。確かに、そういう現象はある。
近頃、繁栄から転落し、容易に低迷から抜け出せないのも、1つにはそういう事情が絡んでいるのではないか。つまり、かつての得意技が今ではかえって足枷になっているのではないか。
では、日本人の得意技とは何なのか。一言でいえば真面目さだ。これが日本の成長を支えてきた。
ただし、真面目であることには弱点もある。それは、視野の狭さ、ワンパターンの発想、様々な状況に柔軟に対応できないことだ。
そこで勧めたいのが、『荘子』である。この本の説くところに耳を傾ければ、もっと幅の広い人間に自分を育てていくことができるかもしれない。
『荘子』と『老子』の違い
『荘子』は、『老子』と並んで「道家」の思想を代表する古典である。
道家の思想の最大の特徴は、その主張の前提に「道」というものの存在を想定していることだ。