2010年2月号掲載
強い者は生き残れない 環境から考える新しい進化論
著者紹介
概要
生物の進化と絶滅の歴史を見ると、生き残るのは「強い者」ではなく、「環境の変化に対応できた者」である。では、どうすれば環境の変化に対応できるのか? 生物学者である著者が、渡り鳥をはじめ、様々な生き物の生態を例に挙げながら、そのカギとなる、他者との「共生」について説く。“一人勝ち”を避け、共生・協力することの大切さを教えてくれる1冊だ。
要約
環境からいかに独立するか
生物にとって、最も大切なこと。
それは、変動する環境の中で生き残ることだ。つまり、リスクを回避して、環境不確定性の影響をなるべく受けない生き方である。
このことから、ある1つの結論が導かれる。生物の進化においては、環境への依存度がより低いものほど選択されやすいという進化の方向性だ。
環境からの独立ということは、環境に依存しないで、安定して存続できるということである。
生物の中には様々な方法で、環境からの影響をなるべく受けないよう進化したものもいる。
例えば、鳥の渡りに代表される季節移動は、周期的な環境変動に適応した結果といえる。
一般に暖かい地域ほど捕食者が多く危険に満ちており、逆に寒冷地ほど捕食者が減る傾向にある。
多くの渡り鳥は、春~初夏に安全な北方(寒冷地)へ渡り、子作りをする。冬にはエサはあるが、危険の多い暖かい南方へ戻る。つまり、春は繁殖のリスクを下げるために北方へ、冬はエサの欠乏による生存リスクを避けるために南方へ渡るのだ。
他にも、環境の悪い時期を眠って過ごすものや、厳しい冬の環境を集団で越冬することで死亡リスクを低減するものもいる。
さらに生物は、環境から独立するための方策として「共生・協力」を進化させていった。
協力し合って生き残る
共生は、様々な生物同士が協力して環境に対抗する方法である。