2010年4月号掲載

現代語訳 論語と算盤

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著者紹介

概要

渋沢栄一は、東京電力、王子製紙をはじめ、約470社もの企業の設立に関わった。“日本資本主義の父”と称されるゆえんだが、渋沢の偉大さはそれだけではない。彼は「論語と算盤」の一致 ―― 道徳に則った経営の大切さを説き続け、私心なき経営に徹した。本書では、こうした経営哲学を語った講演録『論語と算盤』を、読みやすい現代語訳で紹介する。

要約

『論語』は実用的な教訓

 明治6(1873)年に官僚を辞めて、もともと希望していた実業界に入ることになった。

 初めて商売人になるという時、ふと感じたのが、「いよいよわずかな利益を上げながら、社会で生きていかなければならない。そこでは志をいかに持つべきなのだろう」ということだった。

 その時、思い出したのが『論語』だ。『論語』には、己を修めて、人と交わるための日常の教えが説いてある。私は、『論語』の教訓に従って商売をしていくことができると思い至った ―― 。

立派な人間が、真価を試される機会

 私は明治維新の前後、世の中が最も騒々しかった時代に生まれ合わせ、様々な変化に遭遇した。

 こんな大きな波瀾は少ないとしても、常に人生には小波瀾のあることはやむを得ない。

 ただ、逆境に立たされる人は、その生じる原因を探り、それが「人の作った逆境」であるのか、それとも「人にはどうしようもない逆境」であるのかを区別すべきである。その後、どう対処するのかの策を立てなければならない。

 では、「人にはどうしようもない逆境」に立たされた場合、その境遇にどう対処すべきなのか。

 「自己の本分(自分に与えられた社会の中での役割)」だと覚悟を決めるのが唯一の策である。

 ところがもし、人間の力でどうにかなると考えるならば、無駄に苦労の種を増やすばかりとなる。最後には逆境の中で疲れ切って、明日をどうするかさえ考えられなくなってしまうだろう。

 だからこそ、「人にはどうしようもない逆境」に対処する場合には、天命に身を委ね、来るべき運命を待ちながら、コツコツと勉強するのがよい。

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