2011年5月号掲載
ドラッカーの教えどおり、経営してきました
著者紹介
概要
著者の酒巻久氏は、キヤノン電子(株)の社長を務める人物。社長就任からわずか6年で、同社を利益率10%超の高収益企業へ成長させた実績を持つ。その氏が長年にわたり座右の書としてきたのが、P・F・ドラッカーの『経営の適格者』だ。本書では、同書をはじめとするドラッカーの著作から文章を引きつつ、氏がその教えをどのように実践してきたかが語られる。
要約
ドラッカー流のマネジメント
1967年、キヤノンに入社した私は、初任給の記念にドラッカーの『経営の適格者』を購入した。
以来、それを座右の書として折に触れ読み返すとともに、その後に出版された他の著作も読み、ドラッカーの教えを仕事や経営に活かしてきた。
なぜ利益が出ないのか
「不況で利益を出すのがますます厳しくなっている」。経営者はよくこんな愚痴をこぼす。だが、利益を出すのは簡単だ。「ムダ」をなくせばよい。
一般的に売上高に占めるムダの割合は、利益率20%超の会社で7%程度、利益率1%程度の会社なら20~30%にもなるという。会社にはそれだけのムダが埋まり、利益を食っているのだ。
では、ムダをなくすにはどうすればいいか。
ドラッカーは「根源に立ち返る」ことを教えている。すなわち、仕事の全ての工程を洗い直し、再構築し、より効率的で効果的なやり方に変える。それによって、利益は積み上がっていく。
時代に合わなくなった古いものを体系的に捨てていく
ムダをなくす、より具体的な方法について、ドラッカーは「計画的な廃棄」を教えている。
彼は言う。「生産的でなくなった(中略)古いものの計画的な廃棄こそ、新しいものを強力に進める唯一の方法である」と。
ここで大事になるのは捨てる順番であり、何が重要で何が重要でないかを判断し、「一番要らないものから捨てていく」ことである。
これは、センスのある経営者が行わないと危険である。なぜなら、捨てるべきものを捨てられなかったり、捨ててはいけないものを捨ててしまったりして、経営を危うくする恐れがあるからだ。
古い会社ほど、要らないものが多い。それは、ぬるま湯に浸かった古参の幹部たちがムダをムダとも思わず放置してきたからだ。ドラッカーが言うように、仕事の全工程の洗い直しと再構築を常に意識していれば、ムダな贅肉はつくはずがない。